切られお富!

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『人のセックスを笑うな』 井口奈己 監督

2008-05-07 21:01:04 | アメリカの夜(映画日記)
原作がゴミみたいな小説だったんで、どうかとは思ったんですが、話題の映画なんで観てみましたよ、これがわたしのGWの過ごし方?

・公式HP
・わたしが以前書いた原作の感想。

結論からいうと、この映画はなかなかの傑作!原作はいらないけど、この映画は今の映画界に必要な一本なんじゃないかな~?

というのも、じつにお金のかかってなさそうな作品なんですが、女性監督でなければできないような演出が随所にみられる。たとえば・・・

永作博美と松山ケンイチの出会いのシーン、軽トラックの荷台に酔っ払った永作博美が乗ろうとする場面の、オンナっぽくない足の感じ。

永作博美が家に帰って、スカートを脱ぐシーンの色気のない無造作ささ。

蒼井優の足をぶっきらぼうに突き出したような、イライラっとした歩き方や、ラブホテルのベットでの乱暴な飛び跳ね方・・・。

どの仕草も、オンナっぽくないがゆえに<オンナっぽい仕草>であって、これが男性監督だったら、たぶんキレイに、色っぽく見えるような演技を要求したんじゃないかと思います。(もっとも、女優だって、普通は気取った芝居をしそうなわけだけど・・・。)

つまり、気を許しているオンナの無造作な仕草がこの映画の基調にあって、突飛な連想かもしれないけれど、「オンナ版神代辰巳」みたいな、カッコつけない芝居の演出ができる監督だって、わたしは思いました。(因みに、この映画の脚本は晩年の神代辰巳作品のスタッフです。)

<参考>
棒の哀しみ(1994) - goo 映画棒の哀しみ(1994) - goo 映画

美術は鈴木清順監督作品で知られる大御大・木村威夫氏ですが、永作博美の家やアトリエにあるちょっと変な形のテーブルなんかは、いかにもって感じ。(このベテラン美術監督の過去の担当作品、『冬の河童』風間志織監督のダイニングを思いだしました。)

そして、わたしが一番胸を衝かれたのは、最後の松山ケンイチが乗ってるバイクを長廻しで捉えた映像で、ここは胸がキュンとしたなあ~。

この場面って、これまた突飛かもしれないけれど、溝口健二監督の『残菊物語』に出てくる、土手の有名な超長廻ショットを思い出しました。

最後に、この映画の音楽のスカスカでチープな感じも、青春の儚さが漂ってきてよい!(ちょっと、初期のキャロル・キングみたいなんですが。)

というわけで、2時間以上はちょっと長いけど、わたくし、推薦いたします!!

因みに、わたし、永作博美はあんまり好きじゃないんですけどね~。

映画「人のセックスを笑うな」オリジナルサウンドトラック
HAKASE-SUN,MariMari,武田カオリ
nowgomix Records

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人のセックスを笑うな (河出文庫)
山崎 ナオコーラ
河出書房新社

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(参考)
冬の河童

アップリンク

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