今時期の北海道では道路上に事故死した昆虫類がごろごろ転がっています。トンボも例外では無く、特に釧路方面ではエゾ属やルリボシ属など、多数のトンボが事故死している姿をよく目にします。写真は先日、エゾトンボを撮影した帰り道で見つけたエゾトンボ♂の亡骸です。我々人間も昆虫を轢き殺す為に車を運転しているわけではないので、仕方の無いことですが、せめて即死だったことを願います。

初めは全く気付かなかったのですが、注意深く周辺を探すと結構な数がいるようでした。♂個体を見たのは1度きりでしたが、♀は目認だけでも6頭以上が確認できました。ただ、視線よりも高い位置に止まることが多く、撮影には苦労しました。すぐ近くに大きめの川が流れていたので、そこから発生しているようです。
写真上/獲物を狙う、写真下/捕食(共に同一個体)
更に周辺を探すと、オオイタドリの葉上からちらちらこちらを覗き込む熱い視線が!♂個体です。飛んだり止まったりを繰り返していたので、摂食しているようでした。初めは落ち着いていたのですが途中で驚かせてしまい、あっという間に樹上へ上がってしまいました。
なんと、姿を現したのはホンサナエの♀です。この想定外な出会いにまたまた大興奮!本種も上川支庁では非常に記録の少ないトンボで、私自身、旭川近郊での生息地は全く知りませんでした。いや~いる所には居るもんですね!新規開拓は半分博打のようなものですが、今回のように大当たりすることもあるので、冒険はしてみるものです。
結局、エゾトンボの発生場所を見つけることはできなかったのですが、更なる出会いもありました!歩き疲れて木陰で休んでいると、オオイタドリの葉上になにやら怪しいトンボが降りてきました。サナエ系ですが、見慣れないトンボです。
午後からはエゾトンボの発生場所を探るべく、近くの林道へ入ってみることにしました。林道上では多数のオニヤンマに混じって、なにやら大きめのトンボがちょくちょく目の前を横切ります。しばらく様子を見ているとエゾコヤマトンボでした。本種がこのような場所に静止するのは珍しいですね。
まさかコエゾトンボまで現れるとは驚きでした。全てエゾトンボだと思っていましたが、コエゾも混じって飛んでいるようです。もっとも、大きさ的に見てもエゾトンボの方が強いので、彼等はあまり目立っていなかったのですね。尾部付属器がはっきりと分かる大きさまでトリミング。間違いなくコエゾトンボの♂です。 写真:トリミング
エゾトンボの♂達が縄張り争いに明け暮れている中、一瞬の隙をついて水筋内に浸入して来た怪しげなトンボ。ん!?これはコエゾトンボですね!これまた以外です。数分間飛び続けていましたが、タイミング良く♀が産卵に現れて、短時間でちゃっかり♀をさらっていきました。
しかし、発生しているのはこのスキー場内からではないようです。おそらくここのエゾトンボはゲレンデ内の雑草地を湿地に見立てて飛んでいるのでしょう。発生場所はまた別の場所。きっと周辺の森林内に生息に適した環境があるはずです。
北海道では「ごく普通に見られるトンボ」と思われがちな本種ですが、実は旭川市などの内陸部では非常に少なく、その生息地もほとんど知られていません。今回発見した場所は同じ上川支庁(本州では県みたいなくくり)で、旭川市内から車で40~50程度の近場です。今まではエゾトンボを見るために片道3、4時間かけて遠征しなければならなかったのですが、まさかこんな近くにエゾトンボの発生地があるとは意外な発見でした。写真は尾部付属器がはっきりと分かる大きさまでトリミングしました。腹部の黄斑からもエゾトンボ♂の特徴がうかがえます。 写真:トリミング