憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

釜茹での刑に処す★新之助シリーズ第11話

2022-09-02 00:11:20 | 釜茹での刑に処す★新之助シリーズ第11話

「くそ~~~~~~~」

朝から殿が大きな声で喚いております。

お食事だって、言うから

新之助は控えて食の間の外で待っております。

でも、あんなに殿が怒っていたら

その声、いやがおうでも、新之助に聞こえます。

どうしたんでしょね?

やっぱり、新之助、気になって

見にいっちゃいます。

「どうなさったのですか?」

そっと、たずねる新之助に一目もくれず

殿はやってきたお女中を

怒鳴りつけます。

「いいか、そんな奴・・かまゆでの刑じゃ!!」

え?

そんな?

いくら、殿が殿だからって、

お女中(かな?)が粗相をしたって、

いくら、腹がたったって

かまゆではいきすぎでしょう?

できるだけ、やんわりと

新之助は殿にきいてみました。

「殿・・どうなされたんですか?」

新之助を見つめ返した

殿の顔は怒りというより、悲しみ色・・・。

『なにが・・あったんだろう』

新之助は殿をお慰めする言葉を考えました。

「殿。どうぞ、殿のお気持ち、新之助にも分けてください」

さすが、新之助。

殿は新之助の言葉を聴くと

「し・・・新ちゃ・・ん」

もう、涙がこぼれてきそうです。

「殿・・お気をしっかりもって、はなしてしまいましょう。

話したら、楽になります・・」

その通り。

いっそう、殿は涙声になりながら、

涙が出るほど哀しい怒りのわけをはなしはじめました。

ですが、涙で、うまく、言葉がでてこない殿なのです。

「ふ・・ふ・・・」

念のためにもうしあげておきますが、笑ってるわけではありません。

「ふ・・ふ・・ふ・・」

「殿・・しっかり・・」

「ふ・・ふ・・ふぎ・・不義・・不義密通・・じゃ・」

え?

驚いたのは新之助です。

どうやら、お女中の誰かといちゃいちゃりんの仲になった殿なのでしょう。

でも、お女中は

不義密通・・・つまり、浮気してたのですな。

でも、どっちが、浮気でどっちが本気か?

本当は殿のほうが浮気相手ではないのだろうか?

などと、新之助は思うのですが

けれど、一国一城の主である殿をして、

両天秤

二股

ダブルブッキング

それでは、殿が怒るのも無理がありません。

「なるほど・・・・」

すると、殿が叫びます。

「はやく、かまゆでにしろ~~~~」

どうやら、そんな無理がとおるわけがないと

わかっていて、憂さ晴らしで怒鳴っているだけのようです。

男と女・・こればっかりは

いくら殿さまでも自由にならないものなのです。

だから、殿も新之助だけにしておけばいいのに、なんて

ぶちぶち、思いながら

殿のお気持ちが静まるのを待つしかありません。

そこへ、

お女中が食事をもってまいりました。

そして、

「お指図とおり、かまゆでいたしました」

と、ひとこと、殿にもうしあげます。

『え?え?』

新之助の驚愕なんか、ちっとも気にせず

かまゆでの刑の報告で

殿の気が晴れたようです。

早速、御膳に手をのばし

卵をつかんで・・

こつこつ・・たたいています。

『え?え?・・殿?』

もう新之助人心地うしなって

殿の人格疑って

殿は・・乱心なされた?

本当にそう思いました。

「うむ・・よく・・ゆでたの。けっこう、けっこう」

あげく、かまゆでを褒めております。

『殿・・新之助は殿と・・これで、永久にお会いする事は・・』

哀しい決別を胸につんで、最後の殿の姿を目にやきつけるように

新之助は殿を見つめ続けていました。

「うむ・・うむ・・よう、ゆでた」

何度か褒めると殿は卵の殻をむき始めました。

「うむ、よくゆでてある・・」

かまゆで・・?

ゆでてある?

ひょっとして?

「殿?かまゆでにしたのは?」

卵にかぶりついた殿は

「ほうだよ・・これ」

は?

はあ?

ははあ・・・・・。

「すると、不義密通を働いたのは・・おひよですか?」

「うん」

うん、って、わるびれもせず

「殿・・それでは、むしろ、不義を働いたのは・・殿ではありませんか?」

「そんなことないもんね~~」

いいえ。

新之助はハッキリと首を振りました。

だって、ほら。

「けけ、こけっ!!」

おひよの亭主?らしい雄鶏がわが子をかまゆでにされたのと

おひよにいたずらをされたのとで

ほら、殿の背後から

怒りの

チキ~~~~~ン キィ~~~~~~~クッ!!

 

          おしまい・・けこっ♪



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