The 理科ロマンスカー

人生を振り返りつつ見過ごしては禍根を残すであろう事柄に着目。
日本の正義・倫理・規範・疑惑等々婉曲的に発信。

「英語教育が国を滅ぼす」・・・藤原正彦名誉教授の提言

2019-12-16 10:26:11 | 日記
 「文藝春秋」2020新年号に、上記タイトルの藤原正彦先生の論文が掲載されています。

 「大学入試改革は産業界主導の愚民化政策である」との捉えで、傾聴に価する考えを披瀝しています。今回問題になった記述式入試にも触れていて、著者が海外大学で教鞭をとっていた体験をふまえた豊かな考えが発信されています。

 その中で特に現場の先生方や保護者に知ってほしい内容に絞って取り上げてみます。今回の小学校での英語の導入にあたっての実害を三つに絞って書かれています。

 まず一つ目は「壮大な無駄」と括られ、英語学習で週に3時間を使うことによって、漢字や九九のままならない日本人が増えると危惧されています。小学校では漢字を確実に覚えさせ、書き順も正しく身につけることや、同様にかけ算の九九を正しく使えるようにさせることが小学校教育の根底の役割であり、基礎基本を身に付けさせることが最大の使命であると示しています。

 注目すべきは、英語を使う仕事は、外交官、商社マン、学者、スチュワーデス等で中学生になって全力で勉強すると身に付くこと、人間以上の人工脳(コンピュータ)研究が進み、現在出回っている翻訳ソフトが一段と進化することなどから、国民の8割は英語を使う仕事にはつかないであろうとの判断で、生活上では不自由しないとの推測が述べられています。

 二つ目は、「日本人としての自覚の妨げになる」ことを危惧しています。小学生にはまず「自国の文化・芸術・文学など」に触れさせ、自信と誇りを身に付けさせることが先決であり肝要であると述べられています。

 三つ目は、「教養を積むことの妨げになること」を心配しています。古今東西の名著を読む時間が取れず、教養が身に付かないことへの指摘です。グローバル社会で生き抜くためには、若いうちに読書を通じて知的充実に励むことが人間的魅力をつける基礎になり、それが教養の背景になることを、著者の体験より述べられています。

 導入された小学校英語の教科を通して、教育について再考できる刺激的内容になっています。是非論文を一読されることをお勧めします。