<2011年10月22日に書いた以下の記事を、一部修正して復刻します。>
日本共産党(以下、共産党と略す)が政党助成金(交付金)の制度に反対し、受け取りを拒否しているのはまことに立派であると評価したい。ところが本来、共産党に交付されるはずのカネが他の政党に“山分け”されていることが、あまり知られていない。私はこのことを知ってビックリ仰天した。
受け取りを拒否したなら、これは当然「国庫」に返納されるべきだろう。これは国民の税金なのである。ところが、共産党の分を他の政党が“ハイエナ”のように食い荒らしているのが現状だ。非常におかしいではないか!!
こんな話はしたくなかったが、政党助成金というのは年間320億円ぐらいあるという。共産党はよく、この320億円を大震災の被災者救援に回せと言っている。これも非常に立派な意見だ。しかし、他の政党は一向に回そうとはしない。320億円はとても有難い資金だからだ。
ここで、他の政党を批判するのは自由だが、現実には国会で「政党助成法」が成立し、運用されているのだ。悪法だろうと何だろうと、国会で決まったことである。この法律を廃止するのに私は原則的に賛成である。その点は、共産党と一致している。しかし、現実に政党助成法を廃止するのは難しい。なぜなら、他の政党が廃止に反対するに決まっているからである。共産党は衆参両院で、たった15人の議員しかいない弱小政党だから、今すぐに政党助成法を廃止するのは無理である。 将来、政権を取ったら、もちろん廃止すればいいのだ。
それならば、当面どうすれば良いのか。共産党員や支持者の中には、せめて共産党の分だけ受け取って、それを被災者救援に回した方が良いという意見がある。私はそれに大賛成だ。何億円だか知らないが、それを被災者の方に回せば、共産党は実に立派だと評価されるだろう。既存のマスコミだって、報道しないわけにはいかない。本当に被災者を救援したいなら、そのくらいのことがなぜ出来ないのか。共産党の諸君! 君らの分は被災者の方に行かず、他の政党の“餌食”になっているのだ。これが「現実」である。これで良いのか。(それとも、他の政党に“貸し”をつくる意図があるのか?) これは被災者救援どころか、単なる“利敵行為”と言うのだ! 被災者を裏切るものだ!!
だいぶ激しい言い方になって失礼した。少し冷静になって、共産主義者が師と仰ぐレーニンの話をしたい。レーニンは確固たる信念を持っていたが、その一方で非常に“柔軟で大胆”な一面を合わせ持っていた。つまり「目的のためには手段を選ばない」ということである。
私よりも共産党の諸君の方がよく知っているはずだが、例えば、第1次大戦中にロシアで革命が起きると、レーニンは亡命先のスイスから帰国するため、なんと敵国であるドイツの“封印列車”に乗ってロシアに帰ったのである。これは有名な話だから誰もが知っているだろう。
つまり、レーニンは敵国・ドイツと話をつけ封印列車に乗ったのだ。これについて、道徳や倫理にうるさい人たちはレーニンを非難した。私が尊敬するフランスの文豪ロマン・ロランもレーニンの行動を批判した。
しかし、目的(革命)のためにレーニンは手段を選ばなかったのだ。後はよくご存知だろう。レーニンはフィンランド経由でロシアに帰ると、猛烈な革命運動を起こし、紆余曲折はあったが、臨時政府を打倒して10月革命を勝利に導いたのである。
目的は何か。革命だろうと被災者救援だろうと、やろうと思えば手段を選ばず出来るのだ。本気で被災者を救援したいのか? それならば、ロシア革命よりはるかに簡単なことである。たとえ数億円だろうと、共産党は自分の政党助成金を受け取って、被災者に回せば良いのだ。それをしないというのは、本気で被災者を救うつもりがないのか!? (あるいは、国庫に返納すべきだ!)
またまた激しい言い方になって申し訳ない。ところで、レーニンはそれより前の日露戦争の頃(1904年)、日本の参謀本部諜報部員である明石元二郎大佐と秘密に会談し、資金援助を受けたという。(これには異説もあるが、明石本人が戦争後そう述べているのだ。)
つまり、日本にとってもロシアの革命勢力にとっても、ロシア帝国が“共通の敵”であり、敵の敵は味方という考えだ。司馬遼太郎氏の歴史小説『坂の上の雲』によれば、レーニンは後に「日本の明石大佐には本当に感謝している。感謝状を出したいほどである」と語ったという。(末尾にリンクしておく)
ロシアの革命家が、敵である大日本帝国の軍人と秘密に会って資金援助を受けるなど、道義的・倫理的に見れば許されないことだろう。時代や環境が今とはずいぶん違うとはいえ、目的のためには手段を選ばないという、レーニンの柔軟で大胆な姿勢を如実に表わすものだ。
私は若き日のスターリンのように、銀行強盗などをやれと言っているのではない。いくら革命のためとはいえ、銀行強盗は犯罪である。平和な今の日本で出来るわけがない。しかし、目的(被災者救援)のためには、政党助成金の自分のものを“合法的”に受け取り、被災者に回して何らおかしくはない。いや、逆に国民から拍手喝采を受けるだろう。そうした上で、助成金の廃止を訴えればより賛同を得られるはずである。
以上、私はレーニンの例を挙げて、確固たる信念を持ちながらも、戦略・戦術はびっくりするほど柔軟、かつ大胆に行なうことを提起したつもりだ。
共産党はよく“北斗七星”に譬えられるそうだ。つまり、不動の星座である。信念も節操も不動だということだろう。それは素晴らしい譬えである。私も北斗七星になりたい。しかし、星は天に輝くものだが、政治は地上のものである。泥臭く生臭いのが政治である。綺麗ごとだけを言っていれば、それは単なる「自己満足」でしかない。坊主がお経をあげているようなものだ。したがって、共産党はレーニンのように柔軟に大胆に行動して欲しい。
たまたま私は本日から、共産党の「しんぶん赤旗」日曜版を購読するようになった。そのため、いささかボルテージが上がったと思うが、率直に言わせてもらった次第である。共産党や党執行部に対して、何の悪意もないことを付言しておく。(2011年10月22日)
<追記>
共産党の現在の議席は少ないが、仮に将来、議席を大幅に増やしたらどうなるのか。それでも、増えた分の助成金を他の政党に“献上”するのか!? 議席を増やしたいのなら、その点をよく考えていただきたい。(2021年7月27日)
私が存じ上げている共産党員のSさんも、最近、助成金を受け取るべきだと語っていた。(2023年3月9日)
政党交付金・・・http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BF%E5%85%9A%E4%BA%A4%E4%BB%98%E9%87%91
明石元二郎・・・http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E7%9F%B3%E5%85%83%E4%BA%8C%E9%83%8E