そのままシオンは東京に出た。
彼は百姓をきらった。
いくらやっても果てしのない仕事と、いくらやっても楽にならない生活と
怒鳴りまわしている父親と、つかれきった母親と。
それらの原因は、百姓にあると思った。農業が自然の中の仕事とか、競争原理のな
い「なりわい」だとか、そんなものは、やったことのないものの言うたわ言だと思
った。
自分と母ちゃんが心配してくれたいくばくかの金で、安アパートを探して、仕事も
見つけた。
気にはならなかったが、すべてのことがカルチャーショックだった。
たとえば、朝の電車の混み方、初め、自分で自分の体を保とうと思ったが、
すぐに、自分をひとにあづけて、電車のゆれに任せたほうが楽だと気がついた。
東京では水も買った。そうでないと水も飲めなかった。
水など飲める水がいくらでも流れていたのにと思った。
自炊の釜も買ったが、米をたくのも面倒だった。
コンビニに行けば、金さえ出せば食い物も買えた。ただ、いつも食べていた米の
味、野菜の味ではないと思った。
ポケットの小銭はすぐになくなった。
つづく
彼は百姓をきらった。
いくらやっても果てしのない仕事と、いくらやっても楽にならない生活と
怒鳴りまわしている父親と、つかれきった母親と。
それらの原因は、百姓にあると思った。農業が自然の中の仕事とか、競争原理のな
い「なりわい」だとか、そんなものは、やったことのないものの言うたわ言だと思
った。
自分と母ちゃんが心配してくれたいくばくかの金で、安アパートを探して、仕事も
見つけた。
気にはならなかったが、すべてのことがカルチャーショックだった。
たとえば、朝の電車の混み方、初め、自分で自分の体を保とうと思ったが、
すぐに、自分をひとにあづけて、電車のゆれに任せたほうが楽だと気がついた。
東京では水も買った。そうでないと水も飲めなかった。
水など飲める水がいくらでも流れていたのにと思った。
自炊の釜も買ったが、米をたくのも面倒だった。
コンビニに行けば、金さえ出せば食い物も買えた。ただ、いつも食べていた米の
味、野菜の味ではないと思った。
ポケットの小銭はすぐになくなった。
