山の天気予報

ヤマテンからのお知らせや写真投稿などを行います。

雲のワンポイント講座第27回 ~雨上がりに森から立ち昇る雲は何?~

2024-07-18 17:34:59 | 観天望気

雨が降っているときや、雨上がり、霧がぱぁーっと晴れたときに上の写真のような雲が山から湧き出るように発生するのを見たことがあると思います。この雲を森林蒸散雲(しんりんじょうさんうん)と呼びます。

 

長く雨が降ると、雨は地上に落ちてくる間に少しずつ蒸発するので、空気中の湿度が高くなります。また、森に降った雨は木の幹や葉っぱから蒸発していくので、木がない場所よりも水蒸気が溜まっていき、空気の中は水蒸気でお腹いっぱいになっていきます。そして、含み切れなくなった水蒸気が雲に変わっていくのです。森に流れる神秘的な雲は、木々の蒸発散によって生まれているのですね。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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雲のワンポイント講座第26回 ~飛行機雲が長く残ると、天気は崩れる!?~

2024-07-18 17:32:42 | 観天望気

青空に広がる飛行機雲。上の写真に見られる帯状の雲は全て飛行機雲が形を変えたものです。上層(上空約7,000m以上)の空気が湿っているときには、飛行機雲がなかなか蒸発せず、長く残ります。

 

それでは、良く言われる「飛行機雲が長く残ると、天気は崩れる」のでしょうか?

これは、当たっているときと外れるときがあります。上層の湿った空気が低気圧や前線の接近によるものであれば、天気は崩れます。しかしながら、一時的に湿った空気が入っているときは天気が崩れません。西側の離れた場所に(関東地方の場合、東シナ海などに)前線や低気圧があるときに、飛行機雲が残るときは天気が崩れるので、天気図と併せて確認すると良いでしょう。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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雲のワンポイント講座第25回 ~山岳波(さんがくは)による雲~

2024-07-15 17:43:58 | 観天望気

先日、八ヶ岳上空にレンズ雲が現れました。しかも三重のレンズ雲です。レンズ雲は、風が山を越える際に生まれる上昇気流が上空や山の下流側に伝わって発生する雲で、山によって発生する空気の波を山岳波と呼びます。レンズ雲の他に吊るし雲や笠雲が山岳波によって発生する雲です。山岳波はある程度、風が強くないと発生しないことから、これらの雲が出たときは、山の上では強風となる恐れがあります。

 

さて、レンズ雲はひとつしか現れないこともありますが、全天に数が増えていくときや、写真のように二重、三重になっていくときは風が益々強まっていき、高い山では天気も悪化することが多くなりますので、覚えておきましょう。

 

ちなみに、今回の三重の雲、一番下は平均的なレンズ雲(八ヶ岳の山脈に沿って波が発生しているため、長めのレンズ雲)ですが、その上の雲は面白い形をしています。雲の端がギザギザしていますが、これは雲が下降しながら蒸発している様子を表しています。雲の形がそれぞれ違うのは、雲が浮かんでいる高さが違うためです。レンズ雲は高さによってさまざまな雲の種類からできています。今回の写真のレンズ雲では、一番下の雲と真ん中は高積雲(こうせきうん)によるレンズ雲、一番上は巻層雲(けんそううん)によるレンズ雲になります。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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雲のワンポイント講座第24回 ~日本海側の疑似好天~

2024-03-15 15:12:41 | 観天望気

日本海側の山岳では天候が急変することが多く、朝のうち晴れていて昼頃から暴風雨、または猛吹雪になることがあります。

そのようなときに気象遭難が多発します。こうしたリスクを予想するには事前に予想天気図を確認することが大切ですが、登山中に雲の変化から天候悪化を読み取ることができます。

今回は、天候が急激に悪化するときの典型的な雲の変化について解説します。

 

疑似好天の朝(3月8日)。嵐になる4時間30分前。西の空に巻層雲が広がっているが、この段階では急激な天候変化の兆しはない。

西の空に組織的な積乱雲の端が(上端が毛羽だっているのが特徴)。さらにその前面に積雲が現れる。このわずか1時間後に、嵐になる。

嵐になる40分前の空。上端が毛羽だっている雲が先ほどより接近し、その下の雲の底がさらに暗くなる。

嵐になる30分前の空。いよいよ雲の暗い部分が接近してくる。

嵐になる20分前の空。

嵐になる10分前。雲からレースのように垂れ下がっている部分、降雪雲(降水雲)が見られる。

嵐になる5分前。すぐ近くまで降雪雲が迫る。

激しいアラレが降り出し、雷鳴も。

アラレの後は吹雪に。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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猪熊隆之の観天望気講座199回 ~天気図と地図から天気が良い山を選ぶ方法~

2024-02-26 17:18:37 | 観天望気

今回は、天気図と地図から天候が良い場所を選ぶ方法についてです。

2024年2月19日に「山頂で観天望気講座」を竜ヶ岳(山梨県)でおこなう予定でしたが、2日前に同じ山梨県の九鬼山に変更しました。

理由は、当日予想される気圧配置から竜ヶ岳では雨と霧で視界が悪く、空や雲を見るのに適しないと判断したことと、九鬼山など山梨県東部も雨予報でしたが、地形の影響で天気の崩れが小さく、視界が効くので空を見ることができると予想したからです。

図1 竜ヶ岳、九鬼山の位置と駿河湾からの湿った空気の通り道

富士山麓の竜ヶ岳は、ダイヤモンド富士など富士山の展望台として知られる山です。空や雲を見るのにも適しており、富士山のどこに雲が発生するかや、雲の種類によってその後の天候を知ることもできるので、山の天気を学ぶツアーや、観天望気講座を過去に何度か実施してきました。

 

竜ヶ岳は駿河湾からの湿った空気が入りやすい場所にあります。これは奥安倍の山地と愛鷹山の間、富士川に沿って湿った空気が山に遮られることなく直接入ってくるからです。図1をご覧ください。今回のように南から南西の風が吹くと、駿河湾からの湿った空気はオレンジ色の矢印のように、竜ヶ岳方面や富士山、道志・丹沢方面へと流れていきます。

一方で、九鬼山は南西側に富士山があり、南から南南西側に道志山塊や三国山などがあるために南からの湿った空気が入りにくい特徴があります。そのため、下層(上空約2,000m以下)で湿った空気が入るときには、これらの山で湿った空気が堰き止められ、雨雲もこれらの山を越えるときに弱められます(ただし、低気圧本体の雨雲など、中層(上空約3,000~6,000m)の雲がかかる場合には、山より高い雲のため、これらの山を越えて九鬼山でも雨になります)。

その辺りを雨雲の動きで見てみましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=CdLhZckIhl8

この雨雲の動きを見ても分かる通り、竜ヶ岳には強い雨雲が断続的にかかる一方、九鬼山にはほとんどかかっていません。実際に、登山中、雨がぱらつくことはあっても、傘や雨具を必要とする雨は降りませんでした。

写真1 青空が上空に見える時間も(2月19日 九鬼山にて)

上の写真のように、南側にある杓子山や御正体山を越えると雨雲が弱まり、青空が広がることもありました。

それでは、南~南西風が吹くことがどうして予想できたのか。

それは天気図を見ることで分かります。

図2 山頂で観天望気当日(2月19日)午前9時の天気図(気象庁ホームページより)

上図(図2)は、当日午前9時の天気図です。日本海西部には低気圧があり、東北東に進んでいます。一方、日本の東海上には高気圧があります。等圧線の間隔が込んでいきているので、高い山では風が強くなっていく気圧配置です。九鬼山でも山頂付近やその手前の南側が開けた場所で風がやや強まるときがありました。さて、本題に戻りましょう。風は、高気圧の周辺では時計回りに吹きます。そしてほぼ等圧線に平行に吹きます(実際にはやや気圧が低い方に横切るように吹く)。このように、等圧線の向きから風の向きを知ることができます。今回は高気圧の西側に入るため、富士山周辺では南から南西風が吹きました。

図3 850hPa面(上空約1,500m)の気温と風予想図(山の天気予報「専門天気図」より i.yamatenki.co.jp/)

また、気象庁のホームページなどで見られる天気図で分かりにくいときは、850hPa面の風向を参考にすると良いでしょう。風向の見方は、下記を参考にしてください。棒から羽根のようなものが出ていますが、その羽根に向かって風が吹きます(図4)。

図4 風の向きと風の強さの見方

このように、事前に天気図から風向きを読み取り、地図から湿った空気が入りやすい場所を予想することで、天気の崩れが小さい山を選ぶことができます。

ぜひ、皆さんもチャレンジしてみてください。

ヤマテンでは、山で雲の見方を学ぶ「山頂で観天望気」を不定期で実施しています。

 

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