山の天気予報

ヤマテンからのお知らせや写真投稿などを行います。

お盆期間の「連休期間予報」と「おすすめ山域」の発表につきまして

2022-07-31 11:33:45 | おしらせ

平素より「山の天気予報」をご利用いただき、まことにありがとうございます。
お盆期間の「7日間・5日間予報」につきまして、ご案内申し上げます。

 発表日時と予報対象期間:
 【第1回】8月8日(月)17時半頃に8月15日(月)までの7日間予報を発表します。
 【第2回】8月11日(木)17時半頃に8月16日(火)までの5日間予報を発表します。
 予報対象山岳:
 全国18山(利尻山、大雪山、飯豊山、燧ヶ岳、谷川岳、剱岳、槍ヶ岳、赤岳、甲武信岳、丹沢山、富士山、木曽駒ヶ岳、北岳、八経ヶ岳、大山、石鎚山、久住山、宮之浦岳)

連休期間予報は、スペシャル予報の詳細予報ページにて、【気象予報士のコメント】と【専門天気図】の間に表示されます。掲載期間は、予報発表から約24時間のみとなりますので、ご注意ください。
グループ分けやご利用上の注意点につきましては、下記の記事をご参照ください。
https://help.yamatenki.co.jp/hc/ja/articles/4402158621209 
次回の連休期間予報は「9月のシルバーウィーク」期間中の予報を予定しています。

なお、お盆期間中の「おすすめ山域」(対象エリアは全国)は8月10日(水)11時半頃に発表します。8月15日(月)までの情報が掲載されますので、併せてご確認ください。
※11日(木)は「おすすめ山域」の発表はありません。

皆様のお盆期間の登山計画や、気象リスク軽減のお役に立てれば幸いです。

株式会社ヤマテン
山の天気予報係

山の天気予報は、ヤマテンで。

https://lp.yamatenki.co.jp/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

猪熊隆之の観天望気講座185

2022-07-30 08:33:44 | 観天望気

雲を見て引き返すタイミングが分かる!?

朝は晴れていて絶好の登山日和に思えても、昼頃から雲行が怪しくなり、突然の雷雨に襲われることがあります。特に、山では早い時間から、落雷や強雨をもたらす積乱雲(せきらんうん、別名雷雲)が発達することが多く、落雷による死亡事故は13時台に多くなっています。

突然の雷雨に思えても、必ず天候が変化する前には前兆があります。しかしながら、怪しい雲行になってきたときに、引き返す判断をするタイミングは難しく、悩まれる登山者の方も多いと思います。

写真1 やる気を出してきた雲

落雷や強雨をもたらす積乱雲は、積雲(せきうん、別名わた雲)が“やる気”を出してぐんぐんと上方へ成長したものです。登山前に予想天気図から、雲がやる気を出しやすい気圧配置であるかどうかや、上空に寒気が入るなど、雲がやる気を出しやすい状況なのかを確認します。そのような状況の場合には、出発時間を早めてなるべく目的地に早めに到着するような計画に変更すべきですし(気圧配置によっては朝のうちの方がリスクが高い場合もあるので臨機応変に)、登山中には雲や風の変化をこまめにチェックして、天候悪化の前兆を早めにとらえることが必要になります。天気図の見方は下記をご参照ください。

猪熊隆之の観天望気講座161回

https://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/21e5fdf213c4e162fd4e4fc5b56a488d

ヤマテンYouTube 第9回 500hPaの気温予想図の利用方法

https://www.youtube.com/watch?v=DXiRd7LMg2g&list=PLMEQ1UAZdr6UQfU8W-lzlWUMc1Ajszs70&index=5

落雷や沢の増水、土砂崩れなどのリスクが高い危険地帯に入る前に、雨雲レーダーや雷レーダーを確認することも大切ですが、山中では電波が通じない場所もありますので、ここでは、私だったらこの雲が見られたら安全な場所に避難を開始したい、あるいは引き返したい、と思うものを紹介させていただきます。

この雲が見られたら引き返したい、8つのポイント

PartⅠ.濃密巻雲が見られたとき

写真2 濃密巻雲(画像の真ん中付近から右上にかけて)

濃密巻雲(のうみつけんうん)は、通常の巻雲(けんうん)よりも濃いものを言います。通常の巻雲(写真3)は、氷の粒でできているため、透けた薄い雲ですが、濃密巻雲は、雲粒が密集しているため、太陽の光を通さず、暗く見えます。

写真3 普通の巻雲

濃密巻雲は、積乱雲からの水蒸気の補給を受けて積乱雲の上に出来た巻雲が、圏界面(けんかいめん)という敷居のような場所に到達し、雲はそこから上には行けないので、横に広がっていった雲です。濃密巻雲は、ひとつの積乱雲からはできず、いくつもの積乱雲があるとき、それらの上にできた巻雲がすべて繋がって濃密になっていったものです。したがって、この雲が見られるということは、近くに落雷や強雨をもたらす積乱雲がある証拠で、避難を開始するひとつのタイミングと言えます。写真4は、積乱雲がさらに接近している状態で、この時点では早急に避難した方が良いでしょう。

写真4 積乱雲の頭上に広がる濃密巻雲

PartⅡ.周囲で入道雲が湧き、その雲底が真っ暗になる

写真5 雲底が真っ暗になり、上端がモクモクと成長している入道雲

夏になると、日中は周辺で入道雲がモクモクと成長していくことが多いです。そのようなときに、雲の底の暗さに注目しましょう。雲は、雲粒が密集したり、雲が厚くなると、雲の中で太陽光が散りばめつくされて、私たちの目に届かないので、暗く見えます。つまり、暗い雲は、雨粒が雲の中でできつつあるということになります。写真5の白い破線のように真っ暗になっていて、雲の上端がモクモクとソフトクリームやカリフラワーのような形になり、かなり高い所まで達しているとき(写真5の赤い破線)は、雲が“やる気”を出している証拠です。周辺でこうした雲が見られるときは、避難開始のタイミングです。雲の上端は近くの雲では見えないので、そのときは周辺の少し離れた雲を観察してみましょう。周辺で雲が“やる気”を出して成長していれば、真上にある雲も同程度の高さまで達している可能性が高いからです。

夏場の積乱雲は、高い山はなかなか越えられないので、高い山(特に山脈)の反対側にできた入道雲が近づく可能性は少ないですが、その内側に存在するときは、やはり避難を開始した方が良いでしょう。ただし、積乱雲が前線や寒冷低気圧に伴う場合には、山を越えてくる場合がありますので、前線や低気圧の動きに注意しなければなりません。

PartⅢ.雲の底から尾っぽのようなものが垂れ下がる

写真6 雲の底から垂れ下がる尾流雲(びりゅううん)

暗くなった雲の底から尾のようなものが垂れ下がる(写真6の赤い破線)と、いつ雨が降り出してもおかしくありません。このような雲が周囲にあり、上端がカリフラワーのように、モクモクとしている場合は、早めに避難を開始しなければなりません。この垂れ下がった雲を尾流雲と言いますが、これは雲粒同士が衝突や合体を繰り返して、雲よりずっと重い雨粒になっていき、落下し始めているものです。まだ十分に雨粒として成長していないので、落下しながら蒸発していますが、これが地上まで届くとカーテンのレースのような雲になり、降水雲(こうすいうん)と呼びます。降水雲の下では既に雨が降っています。

写真7 尾流雲から降水雲に変わる様子

PartⅣ.上が透けて下が真っ黒な雲

雲が少し離れているときは、雲の上端を見ることができます。そのとき、雲が透けて見えるときは、雲が氷の粒でできていることを示しています。雲は氷点下になってもなかなか凍りません。このように透けて見える雲は、全てが氷の粒でできている雲で、氷点下40度以下にあることを教えてくれています。夏場でそれだけ低温にあるということは、雲が相当な高さまで到達していることになり、いわゆる雲がめっちゃ“やる気”を出しているということなのです。そのような雲で、雲の底が暗い場合は、積乱雲になっている可能性が高く、partⅢ同様、周辺でこのような雲が見られるときは、避難開始のタイミングです。特に、このような雲が下記の方角にあるときは、直ちに避難しなければなりません。

  • 真上
  • 周辺(高い山の手前側、内側)
  • 風上側(尾根上では風を感じ、それ以外の場所では、雲の流れから把握する)

ここからは霧に覆われて周囲が見られないときの避難開始のタイミングです。

Part.Ⅴ 風の強さ、向きが変化したとき

霧に覆われると、周囲が見えなくなり、雲が観察できなくなります。そのようなときは、風の変化を感じましょう。風が急に強くなったり、逆に前線が接近しているときは、強かった風が急に弱まったとき、風向が急に変わるときは要注意です。雨雲レーダー、雷レーダーなどを確認しましょう。電波が通じないなど確認できない場合には、耳を澄ませて雷の音がするときはすぐに避難を開始しましょう。

図1 雨雲レーダー、雷レーダーで雷雲の存在を知ることができる(気象庁ホームページより)

Part.Ⅵ 冷たい風に変わったとき、生暖かい風が急に吹いたとき

霧に覆われているときで、それまで冷たく、心地よい風が吹いていたのが急に生暖かい風に変わったり、それらが交互に吹いたりするときや、冷たくじめっとした空気が感じられたときは、天候悪化の前兆です。避難を開始するタイミングと言えるでしょう。

Part.Ⅶ 大粒の雨が降り出したとき(雹、アラレを含む)

大粒の雨がごくわずかでも降り始めたら即避難を開始しましょう。粒が大きい程、雲は“やる気”を出しているからです。雨粒は落下するときに、蒸発して少しずつ小さくなりながら落ちていきますが、雲の中で上昇気流が強いと、落ちることを許されず、再び巻き上げられて他の雲粒などと合体して、限界まで大きくなってから落ちてきます。雨粒が大きいほど、雲の中の上昇気流が強く、“やる気”を出していることになります。アラレや雹が混じっているときも同様です。また、大粒の雨が降った後、頭上だけ晴れ間が広がることがあります。太陽が射してくることもありますが、この晴れ間の後に、激しい雷雨をもたらす雲が来たり、頭上で発生する可能性があります。この晴れ間は、避難するために使いましょう。ただし、頭上だけでなく、広く青空が広がり、周囲に入道雲がないときは、この限りではりありません。

Part.Ⅷ 雷の音がし始めたとき

霧に覆われて雷の音がするときは、たとえその音が遠くに聞こえてもすぐに避難を開始しましょう。音が聞こえるということは、それなりの距離にありますし、たとえ離れていても、その雷雲がキッカケですぐ近くで別の雷雲が発生する可能性もあるからです。また、霧に覆われていないときでも周囲で入道雲や積乱雲が発達しているときには、同様にすぐに避難を開始しなければなりません。

また、登山中に落雷や強雨に襲われたときに、身を守る方法については以下のバックナンバーもご参考に。

落雷、局地豪雨を予想しようⅠ

https://sangakujro.com/%e8%90%bd%e9%9b%b7%e3%80%81%e6%a5%b5%e5%9c%b0%e8%b1%aa%e9%9b%a8%e3%82%92%e4%ba%88%e6%83%b3%e3%81%97%e3%82%88%e3%81%86%ef%bc%88%e4%b8%8a%e7%b4%9a%e7%b7%a8%ef%bc%89%e5%89%8d%e7%b7%a8%ef%bc%88%e7%ac%ac40/

落雷、局地豪雨を予想しようⅡ

https://sangakujro.com/%e8%90%bd%e9%9b%b7%e3%80%81%e6%a5%b5%e5%9c%b0%e8%b1%aa%e9%9b%a8%e3%82%92%e4%ba%88%e6%83%b3%e3%81%97%e3%82%88%e3%81%86%ef%bc%88%e4%b8%8a%e7%b4%9a%e7%b7%a8%ef%bc%89%e5%be%8c%e7%b7%a8%ef%bc%88%e7%ac%ac41/

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる

 

山の天気予報は、ヤマテンで。

https://lp.yamatenki.co.jp/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山で学ぶ観天望気(空見ハイキング)ツアーのご案内

2022-07-24 11:33:53 | おしらせ

山の天気予報会員各位

平素より「山の天気予報」をご利用いただき、まことにありがとうございます。
空や雲を見ることを楽しみ、山の天気について学ぶツアーを実施しますので、ご案内申し上げます。

【募集中】
●秋の入笠山 空の観察とのんびりハイク2日間
秋色に染まる入笠湿原、八ヶ岳や南北・中央アルプス、富士山など中部山岳の大パノラマが広がる絶景の山頂。
ゆったりとした1泊2日の行程で雲を眺めたり、風の気持ちになりながらハイキングを楽しみます。宿泊は、お食事に定評のある山上のマナスル山荘。晴れれば、満天の星空が迎えてくれることでしょう。

日程:2022年10月29日(土)~30日(日)
企画・実施:株式会社毎日企画サービス(毎日新聞旅行)
集合場所:JR茅野駅 改札前 / 10:15
https://www.maitabi.jp/parts/detail.php?t_type=&course_no=21064

【満席・キャンセル待ち】
●紅葉の八幡平・三ツ石山・秋田駒ヶ岳 3日間
日程:2022年9月25日(日)~27日(火)
企画・実施:株式会社アルパインツアーサービス
集合場所:JR盛岡駅 改札前 / 10:15
ツアーの詳細や申し込み方法は下記URLにてご確認ください。
http://www.alpine-tour.com/tourinfo/details.php?keyno=3561


過去における空見ハイキングの動画を以下に公開しております。
https://www.youtube.com/watch?v=IlC5F-us4qM&t

皆様と一緒に山を歩き、空見(そらみ)ができることを楽しみにしています。

株式会社ヤマテン
気象講習係

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

海の日連休の「連休期間予報」の発表につきまして

2022-07-06 11:20:18 | おしらせ

山の天気予報会員各位

平素より「山の天気予報」をご利用いただき、まことにありがとうございます。
海の日連休の「5日間予報」につきまして、ご案内申し上げます。

 発表日時:7月13日(水)17時半頃
 予報対象期間:翌日、翌々日の予報に加えて、7月16日(土)~7月18日(月)までの予報を発表
 予報対象山岳:全国18山(利尻山、大雪山、飯豊山、燧ヶ岳、谷川岳、剱岳、槍ヶ岳、赤岳、甲武信岳、丹沢山、富士山、木曽駒ヶ岳、北岳、八経ヶ岳、大山、石鎚山、久住山、宮之浦岳)

連休期間予報は、スペシャル予報の詳細予報ページにて、【気象予報士のコメント】と【専門天気図】の間に表示されます。掲載期間は、予報発表から約24時間のみとなりますので、ご注意ください。
グループ分けやご利用上の注意点につきましては、下記の記事をご参照ください。
https://help.yamatenki.co.jp/hc/ja/articles/4402158621209 
次回の連休期間予報は「お盆」期間中の予報を予定しています。

翌14日(木)の「おすすめ山域」(対象エリアは全国)では、18日(月)までの情報を掲載します。併せてご確認ください。

皆様の海の日期間の登山計画や、気象リスク軽減のお役に立てれば幸いです。

株式会社ヤマテン
山の天気予報係

 

山の天気予報は、ヤマテンで。

https://lp.yamatenki.co.jp/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

猪熊隆之の観天望気講座184

2022-07-01 18:00:23 | 観天望気

湿った空気 VS 乾いた空気

今回は、梅雨明け前の上信国境の山から見られた、湿った空気と乾いた空気の闘いについてです。この日は、明け方まで雨が降っていましたが、朝には止み、上空は層積雲(そうせきうん、別名うね雲)に覆われていました。そして、千曲川に沿うように層雲が広がっていました。

写真1 層積雲に覆われる安藤百福センター(長野県小諸市上空)と千曲川沿いの層雲(そううん、別名きり雲)

図1 当日朝の地上天気図(気象庁提供のものに猪熊が作図)

この日の朝の天気図を見ると、梅雨前線は、東海地方から朝鮮半島にかけて天気図上から消えており、活動が弱まっています。オホーツク海には、冷たく湿った空気を持つオホーツク海高気圧があり、日本の南東海上には太平洋高気圧があって、勢力を南西諸島方面に広げています。

オホーツク海高気圧からの冷たく湿った空気が流れ込み、関東地方では層積雲に覆われています(図2)。湿った空気が強かった朝のうちは、碓氷峠など標高の低い所を雲が越えて、西側に流れ込んでいました。それが写真1で見られる、千曲川上空の層雲(きり雲)です。一方、湿った空気が届かない画像左端には空の明るい部分があり、この辺り(長野盆地の方角)では晴れています(写真1)。また、層積雲は雲の高さが低いので、富士山の周辺に穴が開いたように晴天域があり、中腹以上で晴れていることが分かります。

図2 当日午前8時55分の可視画像(ひまわりリアルタイムwebより)

日中は次第に湿った空気の流れ込みが弱まり、午前9時前になると、安藤百福センター付近では青空が広がってきました(図2)。これは、関東山地で湿った空気が食い止められることと、碓氷峠や関東山地を越えると下降気流になって雲が蒸発していくためです。

図3 安藤百福センター、篭ノ登山周辺の概念図(国土地理院の地理院地図に猪熊が加筆)

図4 当日正午の地上天気図(気象庁提供のものに猪熊が作図)

図4は、正午の天気図ですが、等圧線が込んでいる所が篭ノ登山付近(△印)にかかってきています。このエリアは地上付近で南西風が吹く所で、上空では西寄り風になっています。このエリアでは、西から乾いた空気が入ってきて天候が回復することが予想されました。一方、等圧線の間隔が広い関東地方では北東からの湿った空気の影響で曇天のエリアになっています。このせめぎ合いで、篭ノ登山付近で湿った空気と乾いた空気が闘っている状態でした。乾いた空気が増したり、湿った空気が入りにくい所に来ると、上空に青空が広がります。

写真2 東篭ノ登山上空に青空が広がる

一方、湿った空気が優勢になった時間帯や、湿った空気が入りやすい水ノ塔山に行くと霧に覆われました。

さて、午後になると、予想通り、等圧線が込んでいる部分に入ってきたため、乾いた空気が優勢になり、篭ノ登山付近では視界が開けて関東側からの湿った空気と、信州側の乾いた空気との闘いを山上から見下ろすことができました。まさに高みの見物ですね!

写真3 三方ヶ峰から湿った空気と乾いた空気の闘いを見下ろす

赤い破線の部分が関東平野から入ってきた湿った空気による層積雲です。雲のてっぺんが平らになっているのは、ここを境にして下に冷たい空気、上に温かい空気があり、空気中に敷居のようなものができるからです。この敷居を越えて雲は上方へ成長することができず、敷居の下で水平に広がっていきます。このような状態の空気は非常に安定していて、雲はやる気を出して上方へ成長できず、赤い破線があるエリアの上方には入道雲などのやる気がある雲は見られません(紺色の破線部分)。

雲の敷居については、下記ブログもご参考に。

http://sora100.net/course/kantenbouki/2363

また、赤い破線の右側(西側)のあたりには関東山地から佐久平に下る斜面があり、山を越えた雲はここで下降して蒸発して消えています。一部、湿った空気の通り道にあたる所では雲が残っていますが、キレギレになって弱まっています(緑色の破線部分)。

雲のないエリアでは、日射によって地面付近の気温が上昇し、上空との温度差が大きくなって雲がやる気を出していきます。写真の上方に見られる積雲(せきうん、別名わた雲)も斜面で温められた空気が上昇してできた雲です。

写真4 池ノ平の東側でやる気を出し始めた雲

写真5 雲粒が成長して垂れ下がった様子

さらに雲が厚みを増したり、密集すると、雲粒同士が合体してどんどん大きくなり、上昇気流に逆らって落下していきます。雲の底から垂れ下がったように見える部分が落下している雲粒や雨滴を表していいて、尾流雲(びりゅううん)と呼びますが、地面に到達せずに消えていることから、雲粒や雨滴は途中で下降しながら蒸発していることが分かります。この雲粒がもっと成長して、地上に到達すると雨が降ります。今回は、上空の寒気がそこまで強くなく、雲のやる気もこれが限界でしたので、にわか雨に降られずに済みましたが、写真5のように雲底が真っ暗で、雲の上がソフトクリームのようにモコモコとやる気を出していったときは要注意です。落雷や強雨の可能性がありますので、危険な場所から離れるようにしましょう。

登山中に落雷や強雨に襲われたときに、身を守る方法については以下のバックナンバーをご参考に。

猪熊隆之の観天望気講座161回

https://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/21e5fdf213c4e162fd4e4fc5b56a488d

雲から山の天気を学ぼう23回

https://sangakujro.com/%E9%9B%B2%E3%81%8B%E3%82%89%E5%B1%B1%E3%81%AE%E5%A4%A9%E6%B0%97%E3%82%92%E5%AD%A6%E3%81%BC%E3%81%86%EF%BC%88%E7%AC%AC23%E5%9B%9E%EF%BC%89/

落雷や強雨を予想しようⅠ

https://sangakujro.com/%e8%90%bd%e9%9b%b7%e3%82%84%e5%bc%b7%e9%9b%a8%e3%82%92%e4%ba%88%e6%83%b3%e3%81%97%e3%82%88%e3%81%86part%e2%85%a0%ef%bc%88%e7%ac%ac38%e5%9b%9e%ef%bc%89/

落雷や強雨を予想しようⅡ

https://sangakujro.com/%e8%90%bd%e9%9b%b7%e3%82%84%e5%bc%b7%e9%9b%a8%e3%82%92%e4%ba%88%e6%83%b3%e3%81%97%e3%82%88%e3%81%86part%e2%85%a1%ef%bc%88%e7%ac%ac39%e5%9b%9e%ef%bc%89/

落雷、局地豪雨を予想しようⅠ

https://sangakujro.com/%e8%90%bd%e9%9b%b7%e3%80%81%e6%a5%b5%e5%9c%b0%e8%b1%aa%e9%9b%a8%e3%82%92%e4%ba%88%e6%83%b3%e3%81%97%e3%82%88%e3%81%86%ef%bc%88%e4%b8%8a%e7%b4%9a%e7%b7%a8%ef%bc%89%e5%89%8d%e7%b7%a8%ef%bc%88%e7%ac%ac40/

落雷、局地豪雨を予想しようⅡ

https://sangakujro.com/%e8%90%bd%e9%9b%b7%e3%80%81%e6%a5%b5%e5%9c%b0%e8%b1%aa%e9%9b%a8%e3%82%92%e4%ba%88%e6%83%b3%e3%81%97%e3%82%88%e3%81%86%ef%bc%88%e4%b8%8a%e7%b4%9a%e7%b7%a8%ef%bc%89%e5%be%8c%e7%b7%a8%ef%bc%88%e7%ac%ac41/

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

山の天気予報は、ヤマテンで。

https://lp.yamatenki.co.jp/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする