~キリマンジャロで見られた雲 partⅡ~
乾季のキリマンジャロでは、朝は標高2,500m以上では青空が広がることが多くなります。そして、日中は谷風(たにかぜ ※)の影響で、南側の山腹から雲が湧きたっていきます。
※ 山谷風の解説については、前号をご参照ください。
写真1 谷風による上昇気流で湧き立つ積雲(せきうん)
太陽が高くなっていくと、地面付近の空気は熱せられて上昇していき、谷風は強まっていきます。その上昇気流に乗って雲は上方へ成長していき(やる気を出し)、写真2のように成長していきます。
写真2 谷風と乾いた空気のせめぎ合い
しかしながら、この雲はキリマンジャロのギボ峰~マウェンジ峰の尾根上(写真2、3の雲の右端)を越えられず、上方では逆に雲が左側に押し戻されているように見えます。
図1 キリマンジャロ周辺の風向と天候
これは、前日までの南東風がおさまり、上空を北東風が吹いているためです。図1のように、北東風は砂漠地帯からの風になるので、乾いており、この風が吹くと雲を蒸発させていきます。従って、雲は尾根を越えて右側に侵入しようとすると、東風に押し戻されるとともに、乾いた空気に触れて蒸発していきます(写真3参照)。
写真3 写真2の解説
この状況はこの日以降、ずっと続き、キボ峰~マウェンジ峰の北東側では雲がほとんどできないのに対し、南西側では雲がぐんぐんやる気を出して入道雲が発達しました。
写真4 尾根の北東側は平地に雲がある程度
写真5 尾根の南西側では入道雲が発達
キリマンジャロは、乾いた空気と湿った空気とのせめぎ合いの場になっていました。こうした観点で登っていくのも楽しいものです。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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