~冬型のときの八ヶ岳の雲partⅡ~
前回は、冬型が強いときと弱いときの八ヶ岳にかかる雲の違いについて見てきました。今回は風向きによる違いについて見ていきます。
写真1 北風系の冬型のときに八ヶ岳にかかる雲
冬型の気圧配置でも等圧線が北北東から南南西方向に走っているとき(図1参照)は、地上付近で北風が吹く形です。このようなとき、風は北八ヶ岳(写真1の左側)方向から南八ヶ岳(写真1の右側)の方向に吹いていきます。雲は八ヶ岳を越えていく間に次第に弱まり、特にもっとも高い横岳~赤岳付近を越えると下降気流になるため蒸発していきます。上の写真1では、その境界がはっきりと分かりますね。このようなときは、八ヶ岳でも南側に行くほど天気が良くなります。編笠山や権現岳に行くことをおすすめします。また、北寄りの風のときは山脈に沿って風が吹くため、摩擦の影響で風が弱められます(稜線では風が地形の影響で回り込むため西よりの風になります)ので、風もそれほど強まらないことが多いです。
図1 北風系の冬型のときの天気図(気象庁提供)
写真2 北西風系の冬型のときの雲
冬型の気圧配置でもっとも良く現れるのは、北西系の形です。天気図では等圧線が北から南へ綺麗に縦縞模様になっている形です(図2参照)。この場合は前回学んだように、冬型が強いか弱いかによって雲の形が異なってきます(観天望気講座124参照)。上の写真は並の冬型のときで、山全体に雲がかかっているのが分かります。北西系のときは、北八ヶ岳よりも南八ヶ岳の方で雲が厚みを増すことが多くなります。
図2 北西系の冬型のときの天気図(気象庁提供)
写真3 西風系の冬型のときの雲
西風系のときは、山だけではなく、里にも雲が広がっていることが多く、山全体が雲に覆われて見えないことが多くなります。風も摩擦の影響がもっとも少ない風向なので、強まりやすく、西風系の冬型のときがもっとも稜線上で荒れた天気となることが多いです。雲が厚いときには山では吹雪になっていることを想定しましょう。
また、このようなとき、八ヶ岳だけでなく、甲斐駒や鳳凰三山など南アルプス方面も雲に覆われていることが多くなります。甲斐駒方面の雲の出方も参考にすると良いでしょう。
写真4 西風系のときの甲斐駒方面の雲
図3 西系の冬型のときの天気図(気象庁提供)
西風系の冬型は天気図で見ると、等圧線が北西から南東方向へ走っているのが分かります。このようなとき、八ヶ岳や南アルプスでも天気が悪くなることが多く、特に北アルプスや中央アルプスでは大荒れの天気になります。事前に予想天気図で等圧線の向きを確認しておくと良いでしょう。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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