~低気圧接近に伴う雲~
今回は、久しぶりに基本に戻り、低気圧が接近するときの雲の変化について解説していきます。低気圧の接近に伴う天気変化については、jROの自救力アップ講座「雲から山の天気を学ぼう」第7回(https://www.sangakujro.com/%E9%9B%B2%E3%81%8B%E3%82%89%E5%B1%B1%E3%81%AE%E5%A4%A9%E6%B0%97%E3%82%92%E5%AD%A6%E3%81%BC%E3%81%86%EF%BC%88%E7%AC%AC%EF%BC%97%E5%9B%9E%EF%BC%89/)を併せてご覧いただくと、理解しやすいと思います。
低気圧が接近してくるときにはまず、温暖前線が接近してくることが多いのですが、今回もそのケースです(2019年3月10日の富山県立山山麓)。
写真1 低気圧が接近するときに現れる巻層雲(けんそううん 別名うす雲)
低気圧が接近してくるときに初めに現れるのが巻雲(けんうん 別名すじ雲)と呼ばれる雲ですが、巻雲を見ただけでは今後天気が崩れるのか、崩れないのかを見分けるのは難しいです。そこで巻雲の次にどのような雲が現れるのかを確認することが重要になります。
巻雲が現れた後、西の空から薄い雲が広がってくるときは天気が崩れていくことが多いです。写真1では剱・立山連峰を富山平野(西側)から見ている写真です。左奥の方(東側)には青空が広がっていますが、それ以外は薄い雲に覆われていますね。このような雲をうす雲(巻層雲)と呼びます。雲はミルク色で、この雲に覆われる天気を「うす曇り」と言います。太陽の周辺をこの雲が覆うときは、太陽の周りを暈(かさ)と呼ばれる虹色の輪が現れることがあります。薄雲が西側から広がって全天を広く覆っていくとき、天気図で低気圧や前線が西の方にないかどうか確認してみましょう。
図1 写真1とほぼ同じ時刻の予想天気図(気象庁ホームページより)
図1のように、西側に低気圧があるときは、天気が崩れていく可能性が高くなります。うす雲が広がってから雨(雪)が降り出すまでの時間は、早くて半日先、遅くても1日先です。
写真2 薄雲の次に現れる半透明高層雲(はんとうめいこうそううん)
うす雲が次第に灰色の濃密な雲になっていくと、天気が崩れる可能性はさらに高くなり、雨(雪)が降り出すまでの時間も数時間から半日後に迫ります。この雲は高層雲(こうそううん)で、写真2(写真2は八ヶ岳山麓で日時は写真1、3~4とは全く別の日)のように太陽がおぼろ気に見えることが多いことから、おぼろ雲と呼ばれます。
高層雲は写真2のように、太陽や月がおぼろげに見える半透明高層雲と、写真3のように太陽や月が完全に隠された不透明高層雲(ふとうめいこうそううん)に分けられます。
写真3 写真2の雲がさらに濃くなった不透明高層雲(ふとうめいこうそううん)
不透明高層雲になると、高い山では雨が降り出すことが多く、平地や山麓でも早ければ数十分後、遅くとも数時間後には天気が崩れていきます。
このときは下層で南東風が吹き、立山山麓では風下側に入ったため、天気の崩れが遅れ、雨が降り出したのは夜半になりました。
写真4 高層雲が乱層雲(らんそううん 別名雨雲)に変わると平地でも雨が降り出す
このような雲の変化を覚えておくと、低気圧や温暖前線が接近してきたときに、この先天気がどう変化していくか、また何時間先から雨(雪)が降り出すかをある程度予想することができます。予想天気図と併せて確認すると、さらに精度は高くなるでしょう。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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