山の天気予報

ヤマテンからのお知らせや写真投稿などを行います。

猪熊隆之の観天望気講座169

2021-06-22 15:07:02 | 観天望気

三方を雷雲に囲まれたとき ~落雷と強雨から身を守ろう~

 

6月14日(月)から17日(木)にかけて、上層に寒気が入り、大気が不安定になって、各地で激しい雷雨になりました。私が住んでいる長野県八ヶ岳山麓でも、連日のように雷雨となりましたが、17日(木)は三方を雷雲に囲まれる状況でした。さて、雷はヤマテン上空に達するのか、それとも・・・?

 

写真1 朝は、青空が眩しく、気温も低め

 この日の朝は、前日までのように、朝からモクモクと雲がやる気を出している気配はありませんでした。しかし、午前10時頃から入道雲があちこちに発生してきます。

 

写真2 午前11時、雲が急速にやる気を出していく

写真3 入笠山方面で雷雲に成長しつつある

写真4 原村方面で雷雲発達中。写真右の方は、既に激しい雨が降りだしている

写真5 車山から南に延びる尾根上で雷雲が発達中

さて、このように三方を雷雲に囲まれてしまいました。雷雲からは、激しい雨が降ります。その雨で空気がひきずり下ろされ、下降気流が生まれます。雨は落下しながら少しずつ蒸発し、蒸発する際の冷却効果で冷やされていきます。こうして冷えた空気が地面にぶつかって周囲に吹き出します。雷雲が接近するときに急に冷たい風が吹き出すのは、この風の影響です。この冷気が周囲の暖かい空気とぶつかると、上昇気流が起きて新たな雲が発生します。図1は、このときの雷雲の位置と、そこから吹き出す冷たい空気、谷風によって運ばれる温かい空気の動きを示したものです。冷たい空気と温かい空気がぶつかる所で新たな雲が発生することが分かります。

 

図1 ヤマテン事務所から見えた3つの雷雲と風の様子

ヤマテン事務所では丁度、2つの雷雲から吹き出す冷たい風と、茅野駅方面から吹く温かい谷風が衝突し、上昇気流が発生して新たな雲ができました(写真6)。

 

写真6 ヤマテン事務所上空でできた雲

この日は上層に強い寒気が入ったため、この雲もやる気を出して成長し、ヤマテン事務所でも激しい雨が降り出すのです。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

山の天気予報は、ヤマテンで。

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猪熊隆之の観天望気講座168

2021-06-22 14:49:37 | 観天望気

~雲から梅雨期の天気を予想する~

今年は、西日本と東海地方で記録的に早い梅雨入りとなりました。6月上旬の時点で、関東甲信以北ではまだ梅雨入りしていませんが、西日本が梅雨入りしたときは、梅雨が始まったかのような悪天が続きました。これを”走り梅雨”と言います。

 さて、観天望気のキホンは、西の空を見ること。それは、日本の上空は夏を除き、偏西風と呼ばれる西風が吹いているからです。この風に乗って低気圧や高気圧が西から東へ進んでいくので、西から天気が崩れることが多くなります。

 しかしながら、夏は偏西風が日本より北へ移っていくのでこの原則は当てはまりません。また、梅雨時は上空を偏西風が吹いていますが、梅雨前線が南から北へ移動していくこともあり、前線の動きを見て、どの方角の空を見るのか決める必要があります。

 

 先日、悪天の合間のわずかなチャンスを掴んで新潟県の五頭連峰に行ってきました。この日の午前6時の天気図が図1です。

図1 午前6時の天気図(気象庁提供)

天気図を見ると、高気圧の中心が五頭連峰付近にあり、梅雨前線は関東の南海上にまで南下しています。一方、21時の予想天気図(図2)を見ると、図1で揚子江(長江)河口付近にあった低気圧が朝鮮半島南部に進み、梅雨前線は西日本で大きく北上しています。

図2 21時の予想天気図

五頭連峰付近では南西(天気図の左下)から北東(同右上)に進んで、南西から前線が接近していることがわかります。このため、天気は南西から北東へと悪化していきます。今回見なければならないのは南西側の空です。

さて、それでは雲の変化から悪天の前兆を掴んでいきましょう。

写真1 青空が広がった五頭連峰

朝は高気圧の中心が五頭連峰付近にあり、青空が広がりました。麓(新発田市)から見ると、五頭連峰の奥にうす雲(巻層雲)が広がっていますが、南東側の空にあるので天気に影響はなさそうです。

写真2 東側の空は青空

稜線に出ても晴れの天気は続き、東側の空は晴れて残雪に輝く飯豊連峰がバッチリ見えました。

写真3 南側の空は薄雲が広がる

一方、南側の空には薄雲が一面に広がっています。この雲は西から東へ動いているので、午前中は、北側にある五頭連峰に広がってくることはありませんでした。

写真4 日本海方面の空

日本海側の山では、日本海がある方角の空もチェックしましょう。五頭連峰では南西から北西にかけての空です。

それは、日本海方向に発達した雲が連なって(写真5)接近してくるとき、天候が急変するからです。写真4は日本海の方角を見た空ですが、目立った雲はありません。天候急変の心配はなさそうです。

写真5 日本海側の山では、日本海に雲が連なってそれが接近してくると天候が急激に悪化する

さて、天気図から午後は次第に天候が悪化すると予想できたので、昼過ぎに下山。その後、車で自宅のある信州へと向かいました。北陸自動車道を西に向かっている間に、南西側の空からおぼろ雲(高層雲)に覆われ、上越市に入る頃、妙高山の南側の空が暗灰色の雨雲(乱層雲)に変わっていくのが分かりました(写真6)。

写真6 おぼろ雲に覆われた新潟県上越市と、その奥にさらに暗い雨雲が出現

写真7 雨雲の覆われ始めた妙高山

さらに車を南に進めて妙高市に入る頃、雨が降り始めました。梅雨前線の北上とともに崩れる空を実感した一日でした。梅雨前線の動きと空の変化が見事にリンクしていました。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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雲のワンポイント講座 第7回

2021-06-15 11:07:18 | 観天望気

雲のワンポイント講座 第7回をアップしました!

今日お見せする3枚の写真は、いずれも6月14日に見られた雲の変化です。昨日は大気の状態が非常に不安定で、1時間に100㎜前後の雨が解析され、記録的短時間大雨情報が出されたり、落雷が各地で相次いだりしました。

その不安定な様子は朝から雲に現れていました。午前7時には八ヶ岳にモクモクした雲が湧き上がり(写真1)、8時半には山頂を覆い尽くすほどの入道雲(写真2)。9時前にこのような雲が湧いているときは、大気がかなり不安定と言えます。

写真1

写真2

その後、昼頃からは強い雨や落雷となりました。写真3の写真では右側が暗く、雲底からは降水の様子も確認できます。雲の全体像は掴めませんが、左奥に見える雲から察するに、この雲もモクモクした雲であったと思われます。

写真3

昨日は上空高い所に強い寒気が流れ込んだことで、雲がやる気を出してグングン成長しました。地上天気図だけでは判断できませんが、ヤマテンの専門・高層天気図の500hPa気温予想図や雷確率を使うことで、危険を事前に察知することが出来ます。ぜひご活用下さい。

文、写真:株式会社ヤマテン

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山カフェ出演のお知らせ

2021-06-14 12:58:56 | おしらせ

6月19日(土)山カフェに出演します。

おかげさまで2度目の出演になります。

石丸さんとは1度目の出演の後、たまたま山でお会いして山頂で2時間位、時間を忘れて話しこみました。

そのことを懐かしく思い出します。今週末、ラジオでお会いしましょう!

https://www4.nhk.or.jp/yamacafe/

「山の天気予報は ヤマテン で検索」
https://i.yamatenki.co.jp/lp/

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山の天気を学ぶオンライン講座(第4回)のご案内

2021-06-12 13:01:20 | おしらせ

平素より「山の天気予報」をご利用いただき、まことにありがとうございます。

ご好評頂いております山の天気講座につきまして、今年は新型コロナウイルスの影響を考慮し、オンラインで開催しております(やまスクとの共催となります)。

第4回オンライン講座の申込みが開始となりましたので、以下の通りご案内いたします。

テーマ:「夏山の気象」
日程:7月3日(土) 
初級編「これだけは知っておきたい!夏山の天気入門」 10:00~11:30
中級編「高層天気図から予想する夏山の気象リスク」 13:00~15:00
講師:渡部均(初級編、中級編)
※講師は変更となる場合があります。
定員:各回とも70名
開催方法:オンラインZoomウェビナー

オンラインでの講座となりますので、全国の皆様にご参加いただくことができます。
また、通常の机上講座同様、質疑応答も可能となります。(後日、講習を録画した動画をお申し込みの方向けに無料配信します。ご都合が付かずリアルタイム参加できなかった場合、当日回線トラブルがあった場合や、復習にご利用ください。)

参加費につきましては、一般の方は2,500円ですが、ヤマテン会員の方は2,000円となります(初級編、中級編両方をお申込みの方は一般の方4,500円、ヤマテン会員の方は3,500円と、別々にお申し込み頂くより500円割引になります)。なお、開催日2日前となる7月1日(木)以降、キャンセル料がかかりますのでご注意ください。

お申し込みやキャンセル料などの詳細は下記URLをご覧ください。
※定員を越えた場合、申込用のページにアクセスできなくなります。お早めにお申し込みください。
お申込時のメールアドレスにつきましては、ヤマテンにご登録いただいているメールアドレス(ログイン時のメールアドレス)をご記入ください。

■初級編
https://shop.yama-school.com/store/products/2021-07-03-summer-weather-basic

■中級編
https://shop.yama-school.com/store/products/2021-07-03-summer-weather-advance

■初級編中級編セット
https://shop.yama-school.com/store/products/2021-07-03-summer-weather-set


なお、初級・中級編ともに「山岳気象大全」(猪熊隆之著・山と渓谷社)第7章の「夏山」の箇所を参考書として受講前・受講後にご一読いただくことで、より理解が深まります。ご興味のある方は是非お手にとっていただければと思います。

講義を受ける際の操作方法につきましては、下記のやまスクのブログにて詳細な解説が記載されております。サポート体制も整えており、不明な点があっても安心です。
https://www.yama-school.com/blog/how-to-attend-zoom-webinar

この機会にぜひ受講いただき、登山をより安全に楽しむための一助としていただければ幸いです。
皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

株式会社ヤマテン
気象講習係

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