今回は、天気図と地図から天候が良い場所を選ぶ方法についてです。
2024年2月19日に「山頂で観天望気講座」を竜ヶ岳(山梨県)でおこなう予定でしたが、2日前に同じ山梨県の九鬼山に変更しました。
理由は、当日予想される気圧配置から竜ヶ岳では雨と霧で視界が悪く、空や雲を見るのに適しないと判断したことと、九鬼山など山梨県東部も雨予報でしたが、地形の影響で天気の崩れが小さく、視界が効くので空を見ることができると予想したからです。
図1 竜ヶ岳、九鬼山の位置と駿河湾からの湿った空気の通り道
富士山麓の竜ヶ岳は、ダイヤモンド富士など富士山の展望台として知られる山です。空や雲を見るのにも適しており、富士山のどこに雲が発生するかや、雲の種類によってその後の天候を知ることもできるので、山の天気を学ぶツアーや、観天望気講座を過去に何度か実施してきました。
竜ヶ岳は駿河湾からの湿った空気が入りやすい場所にあります。これは奥安倍の山地と愛鷹山の間、富士川に沿って湿った空気が山に遮られることなく直接入ってくるからです。図1をご覧ください。今回のように南から南西の風が吹くと、駿河湾からの湿った空気はオレンジ色の矢印のように、竜ヶ岳方面や富士山、道志・丹沢方面へと流れていきます。
一方で、九鬼山は南西側に富士山があり、南から南南西側に道志山塊や三国山などがあるために南からの湿った空気が入りにくい特徴があります。そのため、下層(上空約2,000m以下)で湿った空気が入るときには、これらの山で湿った空気が堰き止められ、雨雲もこれらの山を越えるときに弱められます(ただし、低気圧本体の雨雲など、中層(上空約3,000~6,000m)の雲がかかる場合には、山より高い雲のため、これらの山を越えて九鬼山でも雨になります)。
その辺りを雨雲の動きで見てみましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=CdLhZckIhl8
この雨雲の動きを見ても分かる通り、竜ヶ岳には強い雨雲が断続的にかかる一方、九鬼山にはほとんどかかっていません。実際に、登山中、雨がぱらつくことはあっても、傘や雨具を必要とする雨は降りませんでした。
写真1 青空が上空に見える時間も(2月19日 九鬼山にて)
上の写真のように、南側にある杓子山や御正体山を越えると雨雲が弱まり、青空が広がることもありました。
それでは、南~南西風が吹くことがどうして予想できたのか。
それは天気図を見ることで分かります。
図2 山頂で観天望気当日(2月19日)午前9時の天気図(気象庁ホームページより)
上図(図2)は、当日午前9時の天気図です。日本海西部には低気圧があり、東北東に進んでいます。一方、日本の東海上には高気圧があります。等圧線の間隔が込んでいきているので、高い山では風が強くなっていく気圧配置です。九鬼山でも山頂付近やその手前の南側が開けた場所で風がやや強まるときがありました。さて、本題に戻りましょう。風は、高気圧の周辺では時計回りに吹きます。そしてほぼ等圧線に平行に吹きます(実際にはやや気圧が低い方に横切るように吹く)。このように、等圧線の向きから風の向きを知ることができます。今回は高気圧の西側に入るため、富士山周辺では南から南西風が吹きました。
図3 850hPa面(上空約1,500m)の気温と風予想図(山の天気予報「専門天気図」より i.yamatenki.co.jp/)
また、気象庁のホームページなどで見られる天気図で分かりにくいときは、850hPa面の風向を参考にすると良いでしょう。風向の見方は、下記を参考にしてください。棒から羽根のようなものが出ていますが、その羽根に向かって風が吹きます(図4)。
図4 風の向きと風の強さの見方
このように、事前に天気図から風向きを読み取り、地図から湿った空気が入りやすい場所を予想することで、天気の崩れが小さい山を選ぶことができます。
ぜひ、皆さんもチャレンジしてみてください。
ヤマテンでは、山で雲の見方を学ぶ「山頂で観天望気」を不定期で実施しています。
山の天気予報は、ヤマテンで。