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ロボットカーレース観戦記 Urban Challenge 2007 (その1)

2007-11-16 | クルマ
先日アメリカに行ってきた。 前回は2004年の1月だったはずだから、ほぼ3年半ぶりとなる。 久しぶりに降り立つカリフォルニアの空は青かった、と言いたいところだが、ANAボーイング777が降下し進入するLAの上空はスモッグに覆われ、視界は澱んでいた。山火事の影響で南部のOrange countyでは灰が降って窓を開けていられない状態だったそうだから、これでも大分改善したそうで、雨が降れば青空が拝めると地元の人間は言っていた。それにしてもクルマ社会のLAでは、まだまだ大気汚染への取り組みは現在進行形だと感じた。空港に降り立つと気温は25度くらいあるだろうか、空気は乾いて日陰はややひんやりするほどだ。これに触れた瞬間、懐かしく「ああLAに来た」と感じた。

今回こちらに来たのは、完全自律走行車のレースを取材するためである。
2004年から米国防省の先進研究機関DARPA(Department of Advanced Research Project Agency)が主催し、今回3回目が行われるロボットカーのレースで、前回の2005年はMojave 砂漠の道なき道を200キロ以上走行するというものだった。 今回は趣向を変え、市街地走行を中心にしたコースで約60マイルを走る。 会場は旧空軍基地跡ということで、一体どんな場所なのか出発前から興味津々であった。 地図で確認したところでは、LA中心部から北東にラスベガスに向かうインターステート15号を走り、ちょうど山火事のひどかったNational forestを東に見ながら抜けて砂漠地域に入ったあたりに、そのVictorvilleという小さな町はあるのだった。 LA到着は2日午前11時半ごろ。 迎えのシャトルで途中のSan Bernardinoのホテルまで行き、初日はそこに投宿する。 翌日は朝6時からDARPAのプレスブリーフィングがあるので早起きしないといけない。 

昼食を済ませて午後はゆっくりするつもりだったが、前夜祭のバーベキューパーティと予選を勝ち残って明日のファイナルに出場する11チームのテントでのブリーフィーングがあるというので、午後4時にホテルを出て約1時間の道のりをバスで会場に向かった。 LA空港からのフリーウェイでも感じたが、ガゾリンが1ガロン3ドルを超えたというのに、相変わらずSUVなど大型のクルマが目立つ。 最近売れ始めているという日本のコンパクトカーは、たまにプリウスを見る以外はほとんど目にしない。 360度開けた大地を縦横に走り巡るカリフォルニアの片側5車線のフリーウェイは1レーンごとの幅も広く、日本では巨大なSUVがちょうどいいくらいのサイズに見える。 道の両側には建物や住宅が遠くまで広がり、自然と格闘し大地を切り開いて人間が移り住んだこの国独特の生活習慣や、そこで求められる車のサイズや性能は、小さな島国や少ない平地に密集して住んでいる日本や欧州とは根本的に違うと改めて意識させられる。

地図上では40マイル程度に見える行程だが、Victorvilleの会場まではほぼ一時間かかった。 マイルだからもちろん1.6倍すると70キロくらいあるわけだが、日本の地図の感覚だとほんの30分くらいで着きそうに見えてしまう距離なのだ。 Sierra Nevada山脈がGreater LAエリアと砂漠を分断している山地地帯を抜けて砂漠に出ると、交通の中継地のために開かれたような小さな街Victorvilleに到る。 旧George Air Force基地、今はロジスティックス専用の空港として使われているという広大な敷地の中に作られた模擬市街地で今回のレースが行われる。

バスを降りると、午後5時を回って西の空に沈み行く太陽の光は既に弱く、気温は急速に降下しており、ジャンパーがないと肌寒い。 この場所では、今の時分でも日中は日なたで30度を優に越し、夜は5度くらいまで冷え込む典型的な砂漠気候である。


(スタンフォード大チームのテントとJunior)

(左‐ルーフトップにある筒状のものが64本の光ビームを出し、一秒間に360度回転するLiderと屋根のサイドから側面を監視するレーザー。右ーフロントは左右合わせてレーダー5機とレーザーと2機を搭載)

前回の優勝チームであり、今回もVWパサートワゴンで連続チャンピオンを狙うスタンフォード大学チームのテントでクルマの説明を受ける。 同大のcomputer science学科の人工知能ラボで教え、チーム監督でもあるドイツ系のセバスチャン・トゥーン教授が、昨日までの第二次予選のビデオを見せながら、計12個のレーザーやレーダーを搭載した自律走行車「Junior」が、半径150メートル内の障害物を常時リアルタイムで3次元把握しているシステムを解説してくれる。 Juniorが静止物と動いている物体を区別して環境を把握している様子が、赤、黄色、緑に識別されたコンピュータグラフィックでPC画面に示される。 自動走行車は、信号や車線の合流、交差点での複数車両の進入などの複雑な交通を、カリフォルニア道路ルールに基づいて、自らのAI(人工知能)で判断して走行する。 認識の対象が静止物だけだった2年前のGrand Challengeと比較して、はるかに高度なAIが必要とされるらしい。 教授と学生達の知性と情熱が混交した快い緊張感が伝わってくる。 時間の経過も忘れてたっぷり話しを聞いているうちに遅くなり、巨大なメディアテント内で振舞われるビュフェの夕食にギリギリセーフで滑り込み、空腹を満たして8時過ぎにバスに乗ってホテルに戻った。


(決勝には残れなかったがこんなクルマも出場した)


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