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日本人人質殺害事件。 憎しみの連鎖を如何にして断つか。

2015-02-08 | 国際政治、時事

まず始めに、1月20日のISのビデオ公開まで、湯川さん、後藤さんが拘束されていたことも知らず、安倍首相の中東訪問のニュースの意味も深く理解していなかった自分の不明を恥じないといけない。 もちろん、日本のメディアもそれをほとんど報道しなかったのだが。 今、メディアやネット上で言われているように、1月20日に2人の日本人の殺害予告ビデオが流された時には、救出の望みは99%なかったのかもしれない。 2億ドルという法外な身代金要求がそれを物語る。

 

政府は身代金交渉に応じるつもりは当初からなかった。

1月23日に外国人記者クラブ(FCCJ)で会見をしたイスラム学者の中田考さん、ジャーナリストの常岡さんを9月と10月に別件で家宅捜索して、その動きを封じた政府のやり方は明らかに彼らの動きを抑制し、この事件を表ざたにすることを封じたものだった。 さらに、後藤健二さんの妻にイスラム国から入ったメールなども知っていながら、その情報を知ったのは12月3日だと答弁した。明らかに12月2日の解散総選挙公示以前に情報がメディアに出ることを忌避したものだろう。 1月の中東訪問も、対イスラム国有志連合の一員になりたい安倍総理の功名心が逸ったもので、イスラエルの国旗の下での記者会見など、あまりにも分別がなさすぎた。 この中東訪問と2億ドルの支援表明が、20日のビデオの引き金になったことは、中東の専門家が一致して指摘している。

 

政府は、湯川さん、後藤さんの人質奪還のためにイスラム国と交渉する気は当初からなかったと思わざるを得ない。それは身代金には応じない米英と歩調を合わせたためだろう。 国会で、共産党の小池晃や、民主党の辻本清美が質問しているが、人質拘束からビデオ公開までの政府の動きは、きっちりと検証されるべきだろう。

 

集団的自衛権を憲法解釈で可能にするなど、安倍政権は一体日本をどうしたいのか。平和憲法を捨て、アメリカと一緒に戦争できる国にしたいのか。 「世に倦む日々」のブログのエキサイトへの掲載が削除されたそうだが、それも官邸からの無言の圧力なのか。 ツイッタ-などSNS上では盛んに議論されているとおり、言論の自由は担保しなければならない。

 

日本の世論の反応は本当のところどうなのか。

イスラム国をテロリストと断言し、「罪を償わせる」と公言して、有志連合に加わることを言明する日本政府に同調する声が強いように感じる。 確かにイスラム国はとんでもない。 スパイ容疑や宗教の冒涜などの言いがかりで、平気で公開処刑をし、子供に殺人させたり、自爆テロさせたり、その暴虐は断固阻止されなくてはいけない。 しかし、武力によって平和は訪れないことは、アフガ二スタン、イラク戦争で証明済ではないか。 一度は壊滅したはずのタリバンがアフガンで復活し、少数派のシーア派政権のイラクは、サダム フセイン以前の混乱と分裂の極みにある。

 

憎しみの連鎖のみを生む空爆は結局解決にはならない。イスラム国というウイルスの勢いを止める対処療法かもしれないが、根絶するのは無理だ。 イスラム国は知らぬ間に暴力でイラクとシリアの領土を占領してきた。これにアメリカを中心とする有志連合が空爆を加える。 これは、イラクがクウエートを占領した時と同じ構図ではないか。 あの時は、アメリカは1993年にGolf Warを発動した。アメリカの艦艇から発射されるトマホークの赤外線映像を今もはっきり思い出す。 連合軍は最後は、地上部隊を派遣してバクダード近くまで包囲したが、サダム フセインを捉えることはせず、イラクの統治権は残した。 それを9.11の後、2003年にイラク戦争でブッシュJr.が崩壊させて、シーア派の政権を作り今の混乱が始まった。 それまで10年間は、国連の核兵器査察などで、サダムのイラクを封印することに曲がりなりにも成功していたのではないか。

 

空爆は対処療法に過ぎない。結局は壊滅させることはできないし、家族や近親者を殺された者の中から、新たなアルカイダ、イスラム国兵士を生む。 終わりのない殺戮が続く。

 

 日本はイスラム国との戦争の「有志連合」には加わるべきではないし、あくまでも人道支援に徹するべきだ。イスラム国に報復すると宣言することは、自国民を危険にさらしていることだと、政府は認識してほしい。そんなに勇ましい国である必要はないし、現行の日本の制度では、戦争に加わることはできないのだから。 ジレンマはおおきいし、こうした状況では、太平洋戦争の時のごとく、好戦論、積極論が勢いを得る。 戦争に翼賛しなければ、卑怯者、非国民の誹りを受けかねない。 9.11以後のアメリカがそうだった。 日本は70年前にそれで自身が壊滅した。 それを忘れてはならない。

 

 

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コメント
 
 
 
平和は地道で継続的な努力でしか生み出せない (ヨシダ)
2015-02-09 00:37:18
yasuさんのご意見に賛成です。ISILを叩いたところでまた別のところから新たなテロリストが生まれて来るだけで、暴力ではテロリストを壊滅させることは不可能です。アフガニスタンやイラクへの侵攻でテロは減るばかりか増え続けていることを冷静に受け止める必要があります。

しかし残念ながら、日本の世論も9.11後の合衆国ほどではないにしても、かなり感情に流されている気がします。まあ私は日本が戦争のできる「普通の国」になった時には、非国民と言われようがとっとと日本から逃亡しようと思いますが、多くの若い人達は自分が戦場に送られるようになるまで声も上げずに状況を受け入れ続けるつもりなのでしょうかね?
 
 
 
吉田さん、コメント有難うございます。 (yasu)
2015-02-09 09:29:22
このところ色々あって、ブログを半年以上書いていなかったのに、早速コメントをいただき有難うございます。
昨夕は、日本のいくつかの都市で、湯川さん、後藤さんらの追悼の集会が行われたようですね。一方、参議院で山本太郎氏以外の全員一致でテロ非難決議がされるなど、アメリカの対テロ戦争発令時と同じような雰囲気になっています。トルコに入ろうとしたカメラマンが、パスポートを返上させられたり、政府の監視が強まり、マスメディアやフリージャーナリストだけでなく、ネットやSNSで政府に批判的なことを言っても、それを探知され圧力を加えられるという危惧がある状況です。 テロの標的になったり、戦争をする国にならないよう、声を集めていかないといけませんね。
 
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