先週、父の七回忌の法要のために山口の実家に帰省したら、国書刊行会から郵便が届いていると母が言う。なんだろうと見てみたら、同社の創立50周年を記念した小冊子が同封されていた。地方の大学で英語を教えていた父が、唯一の書籍「ヘミングウェイの女性たち 作品と伝記の間」を国書刊行会から出すという話を少し不思議な面持ちで聞いた記憶がある。 . . . 本文を読む
今年6月、沖縄普天間基地移転問題で、辺野古以外の代替案を結局提示できないことが引き金となって鳩山内閣が倒れ、その後の民主党代表戦を小沢と戦って総理になった管直人がこの「小説琉球処分」を読んでいると、その頃ある週刊誌にあった。 明治維新を経て後の数年間に、版籍奉還、廃藩置県、廃刀令、四民平等と徳川260年の社会制度は根底から覆され、新しい近代社会に日本は大転換を遂げていった。そうした時代の激動はしかし、本土から1000キロ以上離れた西南海の島で、何世紀も王をいただいて独自の制度を維持していた琉球にはどこか遠くの出来事であった。 . . . 本文を読む
江藤淳が亡くなってから、既に10年余りがたつ。
1999年7月、前年11月に最愛の伴侶である慶子夫人を亡くし、「妻と私」という佳品を残した後の自死は、もちろん少なからぬ驚きをもって迎えられた。 とはいえ、批評家や知識人が社会の中心にいて世論を牽引する時代は既に過去のものであり、その死は比較的早く忘却されていった印象がある。 間もなく扉を開いた21世紀は、インターネットによる情報通信革命が世界のフラット化を促進し、 9・11テロがアフガン、イラク両戦争を引き起こし、EUの統合とBRICsの台頭が世界の多極化を現出し、めまぐるしい変化の渦中に人々を否応なく巻き込んだ。
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ミャンマーのサイクロン、四川省の大地震と大変な災害に胸の塞がれるようなこの頃である。特に、四川省の地震は、阪神大震災や中越地震など、常にこの災害の脅威にさらされている日本人にとって、痛切なものがある。地震の規模が大きかったとはいえ、あれほど広範囲にわたって建物が倒壊し、多くの人が生き埋めになる大惨事になったのは、やはり耐震構造などほとんど考慮されていない設計や、粗悪なコンクリート、いい加減な施工のせいであろう。被災地を訪問する共産党幹部が被害者を慰問し鼓舞する映像は、ぎこちなく、演じられたようで、共産党支配の中国に、言論の自由や人権の思想が欠落していることを露呈した。
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