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福島原発災害エリアを5年ぶりに再訪

2018-05-06 | 脱原発

福島原発災害エリアを再訪

 

2013年にイワキから富岡町まで北上して以来、5年ぶりに浜通り、それも原発災害中枢部へ足を運んだ。二本松市から国道459号で東へ浪江町まで向かう。このルートは、原発災害前も良く使われていたようで、二本松市内から浪江の道路標識が数か所みられる。また、浪江町の現在の役場は二本松市に移転していることからも、この2つの町が阿武隈山地を挟んで、かなり往来が多かったことが伺われる。

 

浜通りと中通りを東西に繋ぐ国道459号を30分近く行き、南北に走る399号と合流する地点で、399号の一部は通行禁止との看板が出ており、クルマのNAVIもこれを迂回するルートを示す。津島を抜ける459号→399号→459号が浪江町役場に至る最短路であるはずだが、これが通れないものと合点して、NAVIに従って林道のような細道を南下していくと県道50号に出た。葛生村を抜けると道路幅が狭く、一部が一車線になる箇所もある50号をひたすら東進する。やがて、阿武隈山地の核心部に至るあたりで459号に合流し、「二輪や自転車、歩行者は通行禁止」のいわゆる帰還困難地域に入る。道路沿いの駐車スペースにも、長時間駐車しないように、との看板がある。ここまで来ると対向車に出会うことはほとんどない。 浪江町は西に広く、標高1000m近い山もある阿武隈山地からの下りで、既に浪江町との看板が出る。 このあたりの車内で線量計は2.2μSv/hを表示する。鮮やかな新緑と渓流のせせらぎの清々しさとは裏腹に、このあたりは原発事故で多量の放射性物質が北西に風によって運ばれた高度の汚染地域であると知れる。

 

山を下り終わって浪江町に入ると、人家は沢山あるのだが人の姿は見えず、クルマと行き会うこともごく稀だ。国道6号線と交差する百メートルほど手前の交差点でクルマを下りてあたりを伺うが、人っ子一人見当たらず閑散としている。線量は0.09μSv/hとフクイチからの距離の近さを思うと存外に低い。もちろん除染がしてあるのは間違いない。浪江町役場の交差点では、役場の反対側にホンダのディーラーの建物があるが、もちろん誰もいるはずもない。そのまま請戸漁港に向けて静かに進む。道路沿いの人家が荒れてはいないのは、きっと定期的に掃除のために帰還しているのであろう。しかしどの民家も住んでいる気配はない。

 

やがて海に面して開けた土地に出る。そこでは防潮堤の大規模な工事や団地を作るための造成が行われている。二重に堤を作るらしく、沖の方まで工事が行われているのは、以前訪れた大川小学校のある石巻市の北上川河口に似たものがある。クルマを下りて写真を撮ると、また6号線にとって返し、5年前には通行できなかったエリア、つまりフクイチの脇を通って富岡町に至る道を進む。浪江からしばらくすると双葉町の看板が現れ、放置されたレストランやガソリンスタンドなどの建物を両側に見る。やがて、大熊町の看板を過ぎると、道路の上に線量を示すモニターが現れる。0.86μSv/hとそれほど高くもない。しかし、いよいよフクイチが左側に最も近づく頃には、現れた路上の表示は2.3μSv/hを超えていた。「東京電力福島第一発電所」という小さな表示が見えると間もなく、左に折れる交差点が現れ、そこが入口と知れる。もちろんバリケードで閉鎖されているのだが。

その先の小さな丘を越えると双葉警察署のある交差点で停止する。ここでは既に0.2μSv/hまで下がっている。2μSv/hを超えた地点から一キロも離れていないのに、こんなに線量が違うとは。

 

その先の富岡町のスーパーには、20台くらいのクルマが駐車していた。立派な一軒家の住宅もたくさん建っており、避難指定地域が解除された富岡町の大部分のエリアは、雑草は刈られ5年前に比べて格段に整備されている。昨夏に津波で破壊された富岡駅も全く新しく竣工して常磐線もここまで来ている。帰還した住民は、事故以前の1万3千人の人口に対してわずか500人程度だという話だが、それでも人々の生活の息遣いがわずかに感じられる(富岡町のHPや広報便りを見ると、今年の4月は、除染の済んだ桜の名所である夜の森で桜祭りが行われ、富岡町立小中学校で入学式が行われたと、高揚感を持って報じられている。)

 

富岡町から再び6号線を今度は反対方向に北上し、南相馬市の小高地区まで走ってみると、南北に長い南相馬市の南部で、震災後長く避難指定地域だったこのエリアは、かなり通常の生活が復帰しているのが感じられる。クルマの交通量も増えてきて、家屋も普通に人が住んでいる雰囲気の所が多い(南相馬市のHPで見ると、震災前の人口7万1千人に対し、現在の居住者数は5万7千人。このうち、鹿島区や原町区は9割近い帰還率だが、避難指定解除の遅かった小高地区は1万3千人に対して、まだ2500人しか住んでいない。)

 

二本松への帰途は、再び浪江まで南下し、浪江ICから常磐道に乗って南相馬で下り、そこから県道14号線で飯館村を抜け、川俣町を経るという経路を取った。飯館村は除染がしっかり行われたようで、人口もわずかでも戻っているようだったし、大変立派な「道の駅」も出来ていた。但し、そこで売られているものは品ぞろえが少なく、しかもほとんどが村外の物で、地元の野菜やコメはほんのわずかであった。

 

いずれにしても、今回の訪問により、原発事故で避難した地域でも除染が進み、線量が一般的なレベルまで下がった地区については、帰還に伴い行政による生活の支援が進みつつあるように見受けられる。しかし、フクイチに近接する大熊町、双葉町、浪江町は多くのエリアが帰還困難地域であり、これらは、半永久的に人の住めない場所になってしまっている。6号線でも浪江町の南部から富岡町の北部までほぼ9キロに渡り「帰還困難地域」であり、山の方ではより広い地域が除染もできず、未だに汚染が放置されている状態だ。

 

核燃料の取り出しと廃炉の目途も立たず、汚染水が未だに毎日何十トンも海に流れ出ている状況で、事故の収束とは到底言えないし、この現実をより多くの国民が認識し、二度と原発災害を出さない政策を実行するように政治に働きかける必要があるだろう。 事故を起こしたフクイチの排気塔が倒壊寸前にあるという報道もあり、直下型地震が双葉断層で起これば、大量の放射能が再度放出される危険性もある。日本列島全体が地震活動期に入っている今、福島原発事故の実態と再稼働の危険性を直視し、再び壊滅的な事故が起こることは何としても避けなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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コメント
 
 
 
Unknown (ヨシダ)
2018-05-07 10:38:12
yasuさん、お久しぶりです。フクイチ周辺のレポートありがとうございます。

私も、2012年から2013年にかけて、南相馬市の小高区に泥出しに行ったり鹿島区の支援先に行くのに、福島駅から飯舘村を通るバスで何度か往復したことがあります。その頃から比べれば除染が進んで居住制限区域はかなり解除されましたが、住民はなかなか戻って来てない様ですね。

事故をできるだけ小さく見せようとか補償を早く打ち切りたいという思惑からも制限の解除を進めていると思うのですが、私は今でもフクイチ周辺はかなり広範囲に永久に住めない土地にすべきだと思っています。

何万人もの人達から住み慣れた土地を奪う大事故を起こし、その終息の目処さえ立たないにもかかわらず、私の住む九州では川内原発に続き玄海原発も再稼働し、既成事実が積み上げられています。立地自治体にはカネがばらまかれ原発から逃れられない様にしておきながら、ほぼリスクしかない周辺自治体の意向は無視して再稼働を進めるやり方には憤りを感じます。

政府にせよ電力会社にせよ、また国民一人一人も、都合の悪いことに目をつぶる姿勢では、遠くない将来にまた壊滅的な事故を引き起こすのではないかと危惧します。
 
 
 
危機は継続しています。 (yasu)
2018-05-08 00:04:18
ヨシダさん、冬眠状態の弊ブログをご覧いただきありがとうございます。ヨシダさんは、南相馬にボランティアで通っておられましたね。私は前回から5年も経ってしまいましたが、今の強制的な避難指示解除、事故の影響の矮小化に違和感を抱いています。確かに、除染も進み、線量が下がっているエリアも増えていますが、もし直下型地震が起これば、排気塔などが倒壊しフクイチからまた放射能が放出される可能性を広瀬隆などの専門家は警告しています。九州も川内、玄海原発は、大きな地震の危険がある場所ですし、原発の再稼働はしてはいけないのだと思います。福島の事態から目をつぶろうとしても、またいつ地震による原発震災が起こるかわからない、そんな状況からはやく脱却しなければいけません。東京五輪に向けて、メディアはますます福島の現実から遠ざかるでしょうから、個々人やネットメディアで情報を発信したり、取得したりしていくほかはありません。
幸いYoutubeなどには、ずいぶんといろいろな情報が今も残っています。今日もNHKのETV特集で事故からひと月も経たない時期に、被災地の線量を図って回った研究者の番組を見つけました。フクイチから30キロ近く離れた場所で、300μSvもあったなんて、今見ても恐怖を感じます。
https://youtu.be/rqcUyNKfx90 
 
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