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yasuの「今日もブログー」

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民主党全国大会、オバマとバイデン

2008-08-30 | バラクオバマと米大統領選
金曜の夜、10時から放映されたオバマの受諾演説は、過去最高の3800万人が視聴したといわれるし、そのスピーチの内容も、政策の具体策に踏み込み、また対抗馬のマケイン候補への攻撃にも余念がないもので、米メディアの評価も高い模様だ。 家族を基盤にし、自分と他人に責任ある態度で、懸命に働くアメリカ中産階級が、普通に希望が持てる社会をもう一度取り戻そうというメッセージが、オバマ、バイデン両氏のスピーチに込められていた。 

既に5人の孫を持つというバイデン上院議員(65)は、ペンシルベニア州の典型的な中産階級の出身で、父親はブルーカラーの出だそうだが、幼い頃から、「人生では必ず苦難や失敗がある。だが、すぐに立ち上がって挑戦を続けるのだ」と父から言われ続けたという。 30歳でセネターになった頃、事故で最初の奥さんを亡くし、子供も重傷を負ったという不幸があり、当時から地元デラウエア州ウィルミントン市からAmtrakで毎日ワシントンDCに通い続けているそうだ。 今回、バイデン氏の演説を聞いて、上院外交委員会の議長の要職を占める彼の演説の力量が、オバマに劣らず情熱的で素晴らしいものであることを心強く思った。 

オバマの方は、聴衆を魅了するヴィジョナリーと現実性を両方考慮した演説だった。 8年のブッシュ政治からの決別の必要を改めて宣言し、マケイン候補をその反復に過ぎないと退け、経済再生や環境政策、外交方針を具体的に述べながら、オバマ‐バイデンの若手・ベテランコンビが、確固たる自信を持って政権を運営し、再び希望の持てるアメリカに変革をしていく決意を語った45分のスピーチは、政治的にも“masterpiece”であったと現地のメディアで評されている。

リンカーンやケネディを引き、歴史の連続性の中に自らを位置づけ、同時に中絶問題や、ゲイの権利、教育や失業、減税、環境、外交政策など、多様なアメリカの有権者層のそれぞれのアジェンダをスピーチに盛り込むその手腕は、全く舌を巻くしかない。 オバマの雄弁を言葉だけと非難する向きもあるが、コミュニケーション能力は、政治的能力の最重要要素であるばずで、特にアメリカのような多様性の社会においてはそうだ。

オバマスピーチは、いつものように、個人の自由、機会の平等、家族や他人への思いやり、勤労の尊さといったアメリカの根源的な価値観を思い出させ、アメリカンドリームの復興を訴える点で今回も一環している。 ここで言う「アメリカンドリーム」は、ウオールストリートや大企業で成功することではなく、普通に希望を持ち、未来を信じて生きるミドルクラスの幸せの権利のことである。最後は、“America, we can not turn back.”と未来を信じて前進するアメリカ建国のスピリッツを喚起し、同時に“ We can not walk alone”という共感と協調を求める45年前のキング牧師のワシントン大行進のメッセージで締めくくったオバマの受諾演説は、政治的指導者としての彼の類い稀な能力を再び示したと思う。 50年近く前、人々が若きJFKに投影した「知的でモラルの高い」アメリカ市民の高潔と、選挙権もまともに行使できない不平等と理不尽と戦いながら、「怒りと反発」の声を上げたキング牧師の「情熱」をともに受け継いだ感のあるオバマを、アメリカはきっと新しいリーダーに選ぶだろう。

大会中、応援演説には、ヒラリー、ビル・クリントン、アルゴアなどそうそうたるメンバーが駆けつけた。 相変わらずの大声援で迎えられたクリントン元大統領は、「16年前、若く国政の経験のない私は、最高司令官としての適正不足といわれたが、そんなことはなかった。私も、そして今オバマ氏も歴史の正しい側にいる」と強力なエールを送った。 

ノーベル賞平和賞のゴアは「私はリサイクルの支持者だが、ブッシュ・チェイニーの8年の失政をこの先4年またリサイクルする愚はあり得まい」と、自らの地球環境維持の活動にからめて語った。 ゴアは、8年前の選挙時は、経済は絶好調で誰がやっても国はうまく行く、といった安心感と無関心が結果的にブッシュ政権を生んでしまったが、このような歴史的失敗を今度の選挙で犯してはならない、と有権者にオバマへの投票を促した。

ところで、民主党大会の余熱が覚めやらぬなか、オハイオ州デイトンで、マケイン候補がVPとしてアラスカの若い女性知事、Palin氏を選んだ。 美人で5人の子供がおり、息子は9月からイラクへ出征。 小さい頃アイダホの田舎で父から鹿打ちの手ほどきを受け、長年の全米ライフル協会の会員。 中絶には反対といったスペックは、保守層には受けるという判断なのだろうか。 しかし、この意外な、やけっぱちともいえなくもないパートナーの選出は、すでに賛否両論を巻き起こしている。 まず、オバマの経験不足を攻撃していたのに、アラスカの田舎町の町長や、知事としても2年足らずの経験しかなく、ましては国政の経験はゼロのアマチュアを選んだことへの疑問。 記者会見では、ペイリン候補は、84年に民主党のデュカキス候補の副大統領候補として立ったフェラーロ女史や、無論ヒラリークリントンといった女性先駆者に続く、といったコメントをしていたが、あまりにも唐突な登場であり、民主党幹部は、ヒラリー票はペイリン候補には流れないだろうとの観測を表明した。 女性票狙いのダークホースしか、VP候補になり手がなかったのか。ペイリン候補の短いコメントを聞いてみても、いきなり副大統領候補に就くような素材とは思えない感じである。

マケインは、元々共和党内でも、本流ではなく異端的な存在だった。 年齢的にも72歳という歴代最高齢の大統領となるし、TV映りやしゃべり方を見ても、申し訳ないが魅力的とは言い難い。 高齢で大統領になったのはレーガンもそうだが、元ハリウッド男優だったロンは、堂々とした体躯、黒い髪、自信にあふれた笑顔と柔和な語り口を持って民衆の人気者だった。 例の「オバマ疲れ」で、最近オバマ対マケインの支持率が逆転したといった世論調査も出ているが、ブッシュ政権の記録的な不人気を考えると、マケイン候補はやはり不利は否めず、11月4日には、アメリカが「希望」の申し子で、史上初の白人以外の大統領にその未来を託する可能性は極めて高いのではないだろうか。 今回のペイリン候補の選出は、手詰まり感のあるマケイン陣営の足を掬う可能性が高いと思う。

ほぼ2年がかりのアメリカ大統領選挙選も、マラソンでいえば38kmを過ぎて、最後の5キロに入ってきた。 最後の戦いに注目しているのは、アメリカ国民だけではない。 年内の解散、総選挙が現実味を帯びてきた日本の有権者も興味深々だ。 それにしても、長大なレースで、瞬発力も耐久力も極限まで試されるアメリカ大統領選に較べて、まともな言論戦もない日本の政治状況の貧困には、改めて暗澹たる気持ちにさせられる。 日本には、オバマが生まれないとすれば、最も親密な太平洋の向こうの隣国の若い指導者に、見えない自国の航海の羅針盤を預けてしまったほうがいいのではないかと、情けなくも思ってしまいそうである。

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