ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『ポン・ジュノ アーリーワークス』を観て

2020年01月02日 | 1990年代映画(外国)
ポン・ジュノ監督のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『パラサイト 半地下の家族』が今月10日から上映されるのを機に、
DVD題名『ポン・ジュノ アーリーワークス』を観てみた。

このDVDには同監督の初期短編が収録されている。
延世大学社会学科を卒業後の自主制作作品『白色人-White Man-』(1993年)。
韓国映画アカデミー在籍中の課題制作『フレームの中の記憶たち』(1994年)、『支離滅裂』(1994年)の3作品である。

『白色人-White Man-』
朝、窓を開けてタバコを吸っていた男は金魚鉢を見、そこから金魚を掴み出してタバコの火を押しつけようとした。
その後、出勤するため駐車場に行った男は、車の横に落ちていた“指”を見つけ、拾う。
職場に着いた彼は、人に見つからないようにひっそりと、キーホルダーに入れた“指”を大事そうに慈しむ・・・

『フレームの中の記憶』
少年が学校から帰って来ると、開いている黒い大きな門から見えている犬小屋の中に、いるはずの“パンウル”がいない。“パンウル”を探す少年。
少年は“パンウル”の名を呼びながら野原も探す。犬の鳴き声がどこからか聞こえて来る。
夜、寝ている少年は犬の鳴き声で目を覚まし、2階から下りて暗闇の中を“パンウル”を探しに行く。机の上の“パンウル”の写真。
翌日、黒い門を開けて少年は学校に行きかけたが、もう一度戻り、閉めた門を開けたままにして行く。門の向こうに見える犬小屋。

『支離滅裂』
・エピソード1 ゴキブリ
研究室でヌード写真集を見て楽しんでいた教授は、授業時刻がギリギリなっっていて急いで教室に行く。
講義をし出したら、うっかり資料を忘れてきたのに気付き、入口近くにいた女学生のキムに取りに行かせた。
キムが出て行ってから教授は、研究室の机の上にヌード写真集を置いてきたのを思い出し、慌ててその後を6階まで追いかけ・・・

・エピソード2 朝の路地
新聞社の論説委員は、朝、ジョギングしながら、他人の門に置いてある牛乳を勝手に飲むのを習慣にしている。
丁度、新聞配達の青年が来たので、論説委員はその家の主人のふりをし、青年にも牛乳を渡し走り去る。
青年が飲んでいると、門の中から夫人が出てきて怒り、新聞の解約を言い渡す。
めげた青年が再び家々に新聞を入れて行くと、路地で、走っている論説委員とバッタリ出くわし・・・

・エピソード3 最悪な夜
宴会場から出て、部下が送ると言うのを断った検事はタクシーで帰ろうとする。
だがタクシーは捕まえずバスに乗る。
酔っている検事は眠りから覚め、途中でバスから降りる。
またタクシーを拾おうとするがままならず、そうこうするうちに便意をもよおす。
我慢が出来ず公園の建物の陰でしようとしたら、管理人に見つかってしまい・・・

・エピローグ
テレビ番組の「明日を診断する緊急討論」。テーマは現代社会の道徳性。
出演しているのは、延世大学心理学科のキル教授と朝鮮日報の論説委員のホ氏。それに西区支庁のピョン検事。
3人が社会問題に関して真面目に対談を行っている・・・

3作品を観てみると、『白色人-White Man-』の、ぎっしりとひしめく貧困街の家々の向こうにそびえ立つ高層マンションの風景が印象的で納得する。
『フレームの中の記憶』は、「伝えたいことを5ショットで表現する」という課題の、少年と愛犬との離別を5分間でまとめた作品が成る程と思う。
そして『支離滅裂』、“情けない男”のブラックユーモアが、後の優れた作品群のニュアンスを連想させて感心させられる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする