ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

忘れ得ぬ作品・7〜『邪魔者は殺せ』

2017年07月20日 | 戦後40年代映画(外国)
10代の時テレビで観て、今でもラストシーンが鮮明に思い浮かぶ作品がある。
キャロル・リード監督の『邪魔者は殺(け)せ』(1947年)である。

キャロル・リードと言えば、当然に『第三の男』(1949年)。
それに引けを取らない傑作が、この作品だと言い切っていいと思っている。
なにしろキャロル・リードは、1948年の『落ちた偶像』も入れて、3年連続で英国アカデミー賞の作品賞を取得した名監督である。

ところは北アイルランド。
非合法組織の地区リーダーであるジョニーは、本部の命令もあって、資金調達のために工場を襲撃する計画をしてきた。
そしてある日、とうとう仲間と計画を実行に移す。
工場からうまく現金を奪えた一味だったが、ジョニーは逃げる途中、工場の出口でめまいに襲われてしまう。
そのジョニーに、追ってきた工場の者が銃を撃つ。
肩を撃たれたジョニーは、相手を射殺し、車に飛び乗る。
しかし、仲間が運転する車に必死でしがみつくジョニーは、振り落とされてしまう。
ジョニーは、瀕死の重傷を負いながら必死で、警察の手の追跡を避けて、どこまでも逃げる・・・

始まりは、船が行き交う場所の広場の、時計台午後4時。
終りが、その場所の午前0時。

さりげなく、目立たないように演出された白黒画面。
白黒が伝えるその表情は、カラー作品では難しいのではないかと思うほどの繊細さ。
この8時間の間に、空は雨になり雪に変わる。
人々は、この厄介者のジョニーに関わりたくはなく、かと言って瀕死の一人の人間を無視できない。
この関わる人たちの、人としての機微が何とも言えないし、その行為は誰でもそうだろうと納得する。

そして、あのラスト。
船が行くこちら側の、柵がある広場。
雪が降りしきる広場のふたり。
追い詰められるジョニーと、恋人キャスリーン。

映画のラストシーンの映像としての力強さ、それは観る側の記憶と関連する。
それと共に、ジェームズ・メイソンの憂えた顔の表情も。
なにしろ観て50年経った今でも、その場面とジェームズ・メイソンは憶えているから。

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