雨水(2月19日)は、二十四節気の第二番目の節気である。春の風が氷雪を溶かし水となって、降雪が降水に変わる時期であることを示している。初春の陽気が生まれつつも、朝晩の気温の変化が大きく、冬の寒気はいまだ完全には消褪していない。「春捂秋凍、不生雑病」、春には厚着、秋には薄着にして、暖かくなったからといってすぐに薄着にはならず、また寒くなったからといってすぐに厚着にしないことが病気の発症を防ぐ養生法である。身体の主要な臓器である五臓は、お互いがその機能を支えあい、また行過ぎた働きを抑制して調和を保っているが、肝が旺盛となる春は「肝強脾弱」になりやすい時期である。脾は、西洋医学的な脾臓とは異なり、漢方・中医学的には消化系統にあたる主要な臓器として捉えられていて、飲食物から栄養物質を消化吸収し、水液を取り入れ、心、肺に受け渡して全身に行き渡らせる最初の段階を受け持つ臓と考えられている。この機能が落ちると、倦怠感、めまい、下痢傾向、肌の色艶が悪くなるなど、全身の気血不足、すなわちエネルギー切れ、栄養不足の状態になる。酸味(すっぱい)、苦味(にがい)、甘味(あまい)、辛味(からい)、鹹味(塩からい)は基本的な味覚で五味と称するが、関連する五臓として、各々肝、心、脾、肺、腎と関連づけられている。「省酸増甘、以養脾気」、春は脾を養うために、酸味のものはほどほどにして甘味のものを増やす必要がある。本格的な春はもう其処まで来ている。
ならざかのいしのほとけのおとがひに こさめながるるはるはきにけり 会津八一 鹿鳴集、奈良坂にて