越王攻呉王、呉王謝而告服。越王欲許之。范蠡大夫種曰、不可、昔天以越與呉、呉不受、今天反夫差、亦天禍也。以呉予越、亦拜受之、不可許也。大宰嚭遺大夫種書曰、狡兎盡則良犬烹、敵國滅則謀臣亡、大夫何不釋吳而患越乎。大夫種受書讀之、太息而歎曰、殺之、越與呉同命。
越王呉王を攻む。呉王謝して服を告ぐ。越王之を許さむと欲す。范蠡・大夫種曰く、不可、昔天は越を以て呉に與へしに、呉受けず、今天夫差に反す、亦天禍なり。呉を以て越に予ふ、亦拜して之を受けよ、許す可からざるなり。大宰嚭、大夫種に書を遺りて曰く、狡兎盡きては則ち良犬烹られ、敵國滅びては則ち謀臣亡ぶ、大夫、何ぞ呉を釋(ゆる)して越を患(うれ)へしめざる、と。大夫種書を受けて之を讀み、太息して歎じて曰く、之を殺さむ、越と呉と命を同じうす。
(内儲説下 六微第三十一│「韓非子 上」, p430-431)
*故事成語「狡兎良狗」の出典。敏捷な兎を追う忠実な猟犬の如く功績のあった参謀の家臣は、敵国が滅び戦闘が終われば有害無用となり見捨てられる。大宰嚭からの書は、呉を存続させて越王の患いの種にしておくのが身の保証という意であった。不倶戴天の呉と越。范蠡と大夫種のその後の運命は。
参考資料:
竹内照夫著:新釈漢文大系「韓非子 下」, 明治書院, 1977
楠山春樹著:新釈漢文大系「淮南子 下」, 明治書院, 2010