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野原に寝る 萩原朔太郎
この感情の伸びてゆくありさま
まつすぐに伸びてゆく喬木のやうに
いのちの芽生のぐんぐんとのびる。
そこの青空へもせいのびすればとどくやうに
せいも高くなり胸はばもひろくなった。
たいさううららかな春の空気をすひこんで
小鳥たちが喰べものをたべるやうに
愉快で口をひらいてかはゆらしく
どんなにいのちの芽生たちが伸びてゆくことか。
草木は草木でいっせいに
ああ どんなにぐんぐん伸びてゆくことか。
ひろびろとした野原にねころんで
まことに愉快な夢をみつづけた。
春の養生の要諦は、たわむことなく、はじけましょう、はっちゃけましょう、ということに尽きるのではないかと思う。『梁塵秘抄』の一節の「遊びをせんとや生まれけむ、戯れせむとや生まれけん、遊ぶ子供の聲聞けば、我が身さへこそ動(ゆる)がるれ」の心のままにである。詩人は深奥に隠された泉から本質を掬い上げて、言葉というメタファーで季節のイメージを鮮やかに紡ぎだしてみせる。この春に続く夏、秋、冬の季節においても、そのような詩に出会えたらと願っている。