白き花風と遊べる無人駅幼きわれがひとり佇む
ガラスの馬 帯野寿美子
木の花の白き盛りをしるべにて旅の終わりの辻を過ぎゆく
柘榴の宿 富小路禎子
四月の晦、五月の朔のころほひ、橘の、葉の濃く青きに、花のいと白う咲きたるが、雨うち降りたる早朝などは、世になう心あるさまに、をかし。花のなかより、黄金の玉かと見えて、いみじうあざやかに見えたるなど、朝露に濡れたる朝ぼらけの桜に劣らず、郭公のよすがとさへ思へばにや、なほさらに、いふべうもあらず。 枕草子・第三十四段
参考資料:
帯野寿美子著:「歌集 ガラスの馬」, 短歌研究社, 2000
富小路禎子著:「富小路禎子全歌集」, 角川書店, 2003
萩谷朴校注:新潮日本古典集成「枕草子 上」, 新潮社, 1977