春日の擔(担)茶屋│大和名所圖會巻之一 添上郡・南都之部
「鹿千年化為蒼、又五百年化為白、又五百年化為玄。」(千年生きれば蒼(青)鹿、さらに五百年経れば白鹿に、それから五百年たてば玄(黒)鹿になる。)は、南朝梁の任昉撰とされる『述異記』巻上の記述である。鹿は仙獣として長寿富貴の象徴である。「鹿」と「禄」は同音(lu4)であり、沢山の様々な姿態の群鹿が描かれた百鹿図は受天百禄を意味する吉祥図である。
奈良生まれで子供の頃から春日大社の鹿を見慣れていて、立派な角の雄鹿に追いかけられたり、芝生の糞を思い切り踏んだり、鹿煎餅をこっそり齧ってみた懐かしい思い出からは、私にとっては有難い霊獣というより憎めない鹿さん達である。
春日 御水茶屋 火打焼│赤膚焼
天保定爾 俾爾戩穀
罄無不宜 受天百祿
降爾遐福、維日不足
天 爾(なんぢ)を保定し 爾をして戩穀(せんこく)あらしむ
罄(ことごと)く宜しからざる無きは 天の百祿を受くればなり
爾に遐福(かふく)を降せば 維(あに)日々に足らざらんや
(天がそなたを安んじ給い、そなたに福禄を授けられた。ことごとくが宜しいのは、天からの数多の幸を受けたからである。そなたに授けた大福の、その多いさは日々有り余るほど。)
(「詩経」小雅 鹿鳴之什・天保│石川忠久著:新釈漢文大系「詩経 中」, 明治書院)