花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

隠れた道

2020-09-11 | アート・文化


人類史のなか中で評判がよい思想は、軸を一つにしてそこに腰をすえ、くりかえしくりかえし、この軸にいろいろの要素をとりこんだ思想であった。思想じしんが、一つの論理軸にそった一つの体系、つまりは共同体をつくりあげる──そのような思想が優勢である。論理の軸が多元的であり、ここからこなたへと旅だつ思想は、敗者であって、記憶されたばあいも、道ばたの道祖神のように、さりげない珍奇さをとどめるにすぎない。共同体型の思想が大勢を制し、交通型の思想は、つねに少数派・マイノリティーとして「正統」思想史によって埋没させられる宿命をもつ。道の思想史とは、こうした敗者の思想を、たどりかえすことではないのか。

(2章 衣通の道─政治と悲恋│山田宗睦著:「道の思想史 神話」, p47-48, 學藝書林, 1969)