帰寺作 大典顕常
春光幾処問名山 春光 幾処か 名山を問う
杓錫帰来独掩関 杓錫 帰り来たつて独り関を掩う
万樹花随行雨尽 万樹の花は行雨に随つて尽きん
一床人対檠短閒 一床の人は対檠に対して閒なり
末木文美土, 堀川貴司注:江戸漢詩選五「僧門」, p279, 岩波書店, 1996
<蛇足の独り言>屋内の東海桜が陽気の高まりを受け白一色の雪樹となった。替わりに馬酔木を用いて若葉が芽吹く時節に思いを馳せ、「吾亦蹈春行」(2023/3/13)の一杯を翠緑の風景に遷した。郭熙の山水画論集『林泉高致』に「真の山水の烟嵐は四時同じからず。春山は澹冶にして笑うが如く、夏山は蒼翠にして滴るが如く、秋山は明浄にして粧うが如く、冬山は惨淡として眠るが如く。」とある。人体は小宇宙、一杯一瓶の生け花も小宇宙である。