豊臣秀吉が、織田信長や徳川家康等、継嗣の若様育ちの武将と決定的に異なるのは、下積時代の生活環境である。碌な装備もないままに酷暑、極寒下の野営や夜駆けもあったろう。”ブラック企業“で長年にわたり心身を酷使した生活習慣が、生来蒲柳の質でなかろうと、後年、他者に先んじ腎虚を発症する要因となったことは想像に難くない。亢龍悔い有り。位人臣を極める頃に躰が容赦なく衰え潰える不安と恐怖。晩期の無慙な闇堕ちには、其の身から失われる性命への渇仰と、いまや躍りて淵に在るわかうどに向けた遺恨が、一筋の黯い底流として流れてはいなかったか。
南無阿弥陀仏。合掌。