「――私。どうしたらいいの」
と、扉の魔女の家の中から、胸に両手を当てたサオリが、心持ちガクガクと震えながら外に出てきた。
「沙織が探している物はなんだった? 目の前の青騎士は、沙織が探している物を持っているんだよ」と、ジローはサオリに言った。
ひっく、としゃくり上げたサオリは涙をこらえつつ、意を決して、押さえつけられた青騎士に近づいていった。
サオリになにかあったら、とサオリの様子を見守っている又三郎は、アオは、ジローは、グレイは、どこか達観しているマコトと、心配そうにしているポット以外は、すぐにでも飛び出せるように息を凝らしていた。
「お父さんはどこ? お父さんを返して――」
階段の中間で立ち止まり、正面にいる青騎士に言ったサオリは、胸の前で重ねていた両手を広げた。
すると、小さな手の中から、緑色の光が文字どおり溢れだした。
「――おい、なんでおまえが持ってるんだ……」と、マコトは思わず身を乗り出して言った。「それって、オレの石じゃないのか」
と、マコトに答える者は誰もいなかった。サオリの手の中で光り輝くのは、なにかの宝石のようだった。
サオリが持っている緑色の石は、まぶしくほとばしる緑色の光を一点に集め、青騎士の被る兜の面に向かってまっすぐに伸びていった。
ぴたり、と青騎士の動きが止まった。
青騎士の腕を捕まえていた二人は、意外な反応に互いの顔を見合わせた。
「どうした――。これって、オレと機械陀が出てきたときに似てるぞ」と、マコトは言って、注意をするように促した。「気をつけろ。なにか予想外のもの飛び出してくるかもしれないぞ」
――ガリッ。
とも、
――ザリッ。
とも聞こえる音を立て、抵抗しなくなった虹色の青騎士の鎧が、面を覆う兜のてっぺんから鋼鉄の足先まで、脱皮をするようにめくれ上がった。