くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

王様の扉(173)

2024-01-21 00:00:00 | 「王様の扉」


「――私。どうしたらいいの」

 と、扉の魔女の家の中から、胸に両手を当てたサオリが、心持ちガクガクと震えながら外に出てきた。
「沙織が探している物はなんだった? 目の前の青騎士は、沙織が探している物を持っているんだよ」と、ジローはサオリに言った。
 ひっく、としゃくり上げたサオリは涙をこらえつつ、意を決して、押さえつけられた青騎士に近づいていった。
 サオリになにかあったら、とサオリの様子を見守っている又三郎は、アオは、ジローは、グレイは、どこか達観しているマコトと、心配そうにしているポット以外は、すぐにでも飛び出せるように息を凝らしていた。

「お父さんはどこ? お父さんを返して――」

 階段の中間で立ち止まり、正面にいる青騎士に言ったサオリは、胸の前で重ねていた両手を広げた。
 すると、小さな手の中から、緑色の光が文字どおり溢れだした。
「――おい、なんでおまえが持ってるんだ……」と、マコトは思わず身を乗り出して言った。「それって、オレの石じゃないのか」
 と、マコトに答える者は誰もいなかった。サオリの手の中で光り輝くのは、なにかの宝石のようだった。
 サオリが持っている緑色の石は、まぶしくほとばしる緑色の光を一点に集め、青騎士の被る兜の面に向かってまっすぐに伸びていった。
 ぴたり、と青騎士の動きが止まった。
 青騎士の腕を捕まえていた二人は、意外な反応に互いの顔を見合わせた。
「どうした――。これって、オレと機械陀が出てきたときに似てるぞ」と、マコトは言って、注意をするように促した。「気をつけろ。なにか予想外のもの飛び出してくるかもしれないぞ」

 ――ガリッ。

 とも、

 ――ザリッ。

 とも聞こえる音を立て、抵抗しなくなった虹色の青騎士の鎧が、面を覆う兜のてっぺんから鋼鉄の足先まで、脱皮をするようにめくれ上がった。

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よもよも

2024-01-20 06:32:59 | Weblog

やれやれ。

歯医者行ってきたんだけど、

治療のことじゃなくって、

支払いのこと。。

初診だったんでそれなりにお金かかったんだけど、

財布開いたら思ってたより手持ちがない。

正直あせったんだけど、支払いは大丈夫だった。。

何でこんなに手持ちがないんかい??

考えたら今週はじめの居酒屋だった。

そんなに飲み食いしたか??

考えたら、

ウーロン茶1杯、コーラ1杯、唐揚げ5個、フライドポテト数本、
枝豆ひと握り、刺身5切れ、おむすび1個、お椀そば1杯。

こんなのコンビニで買い物したら2千円くらいじゃない??

飲み放題付きで1人あたり4千円支払ったんだわ。。

給料もらうまで生きてられっかなXXX

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王様の扉(172)

2024-01-20 00:00:00 | 「王様の扉」

 一瞬、動揺したように空中でバランスを崩したアオだったが、青騎士の背中から転がり落ちた又三郎が、体勢を立て直して一気に間合いを詰め、青騎士に鉄棒を打ちこむと、迎え撃つように振り上げられた青騎士の大剣を、今度は小刻みに振るった次元刀で、粉みじんに裂き切ってしまった。
 振り下ろした大剣を失った虹色の青騎士は、バランスを失って階段をずり落ちた。
 又三郎の放った鉄棒の一撃が、青騎士の肩に打ちこまれた。
 青騎士は、ガツン――と、硬い音を立てて打ちこまれた鉄棒を両手でつかむと、又三郎の手から奪い取ろうとしたが、又三郎は鉄棒ごと青騎士を持ち上げ、頭上を越えて草原に投げ倒した。
 草原に放り出された青騎士が立ち上がると、又三郎は扉の魔女の家を背にして立ち、二度と階段を上らせまいと構えていた。
 よろよろと歩き始めた青騎士は、又三郎に握手を求めるように近づいて行った。

「――だめだっ、鉄棒を引いて」

 と、ドアの奥からグレイの声が聞こえ、又三郎は突き出そうとしていた鉄棒をさっと後ろに引くと、つかみかかろうとした青騎士の手をさらりとかわして避けた。
 すると、扉の魔女の家のドアが勢いよく開き、グレイとジローが飛び出してきた。
 二人は、虹色の青騎士の左右の腕を捕まえると、身動きができないように押さえつけた。

「沙織、君がやろうとしていたことはなんだ? どうしてここにいるか、君は最初から知っていたはずだ。今ここで、青騎士と戦って、沙織自身を取り戻すんだ」

 と、ジローは青騎士の腕を捕まえながら、サオリに向かって言った。
「――大丈夫。ぼく達がついてるよ」と、グレイが優しく声をかけた。「サオリが探している物は、この青騎士の中にあるんだ」
 と、ドアの奥から、マコトが外に出てきて言った。
「その中にいるのはわかってるんだぜ、魔女のアレッタ」と、マコトはもがいている虹色の青騎士に向かって言った。「さっきはよくもやってくれたな。ずいぶん昔の出来事を思い出させやがって、具合が悪くなったぜ。この謝罪はきっちりしてもらうからな」
「――アレッタ様。その中にらっしゃるんですよね」と、ポットはこわごわした足取りで外に出てきて言った。
「おっと。危ないからそれ以上近づくなって――」と、マコトは言いながら、階段から落ちそうになったポットの手を捕まえて、引き戻した。
「魔女様の扉が教えてくれたんです」と、ポットはマコトに手を引かれながら言った。「魔女様みたいに、扉の声がなにを言っているのかはわからないですけど、繰り返す魔女様の名前だけは、扉がなにを言いたいのか、長いつきあいのおかげで、理解することができました」

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王様の扉(171)

2024-01-20 00:00:00 | 「王様の扉」


「ポット殿、私たちにはかまわず、サオリ殿を連れて、扉から逃げてください」

 と、地面に手をついた又三郎は、四つ足で草原を駆けながら、大きな声で言った。
 虹色の青騎士は、木の階段を駆け上がり、扉の魔女の家のドアにたどり着いた。
 ドアの前に立った青騎士は、ノブを握ることなく、頭上高く大剣を振り上げて、ドアを切り破ろうとした。
 ダダン――と、しかし玄関のドアは、扉の魔女の魔法がかけられているのか、容赦なく打ち下ろされた大剣をものともせず、音を立ててはじき返した。

「離れなさい」

 と、青騎士の背中に飛びついた又三郎は、鎧に突き刺さった鉄の棒を両手でつかみ、引き抜こうとしていた。
 青騎士は、背中に上った又三郎には構いもせず、大剣を構え直すと、玄関のドアに再び打ちこんだ。
 サオリとポットは、家の中からこちらの状況を見ているはずだった。
「ポット殿、サオリ殿を連れて、早く逃げてください」と、又三郎は大きく揺れる鉄棒につかまりながら、ドアの向こう側にいるはずのポットとサオリに言った。

「だめなんだよ。どこにも逃げられない」

 と、ドアの向こうから、くぐもったポットの声が聞こえた。「魔女様の扉達が、騒ぎ始めたんだ。もう僕らを、扉の向こうに行かせてくれない」
「――」と、又三郎は、信じられないというように、首を振って言った。「しかたがありません。どこでもいいです。安全な場所に逃げてください」
 ――――。

 と、ポットとサオリになにかあったのか。ドアの向こうから聞こえていた声が、急に押し黙ったように聞こえなくなった。
「――大丈夫ですか。ポット殿。サオリ殿」と、ドアの向こうに声をかけた又三郎は、ようやく鉄の棒を引き抜き、虹色に光る青騎士の背中を、後ろ向きに転げ落ちていった。
 鉄の棒を両手に持ちながら、唇を噛んでいる又三郎を尻目に、虹色の青騎士は幅広の大剣を目の前のドアに打ちこみ続けていた。

 キキッ――。

 と、矢のように飛んできたアオが、素早く剣を振るった。
 青騎士の虹色の鎧が、空間ごと歪むようにずり落ちるかと思われたが、振り返りざまに振るった青騎士の大剣は、見えない空間ごと鎧を断ち切ろうとしたアオの剣を受け、火花を散らせてはじき返した。

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よもよも

2024-01-19 06:19:06 | Weblog

やれやれ。

昨日は思い知った・・・

ココアってば、ちょいお遅くまで起きて映画見よう

なんて思ってるときに飲んじゃだめだね。。

コーヒー切らしちゃってたから

サブスクの映画見ようと思いつつココア飲んだら、

いっぺんに眠気が襲ってきて

アルコールも飲んじゃいないのに

フラフラッと酩酊状態XXX

映画なんか見てる余裕もなくなって

寝床に付く以外選択しなくなってた。。

仕事から帰ってきて少ない自由時間なのに、

仕事から仕事のタイムリープしてるみたいな感じ・・・。

はぁ。

それでもやっぱしココアはうんまい。。

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王様の扉(170)

2024-01-19 00:00:00 | 「王様の扉」

 ――次元刀。それが、アオが思い出そうとしていた武器だった。どれだけ距離が離れていようと、どれだけ強固な武器であろうと、目の前にある空間ごと切り裂いてしまう奇妙な剣だった。
 草原に降りたアオは、満足げに刀を振るうと、アオの父親がそうしていたように、翼の下から顔を覗かせた鞘に器用に刀を納め、外からではまるでわからないほど、しっかりと翼の下に刀をしまった。

 キキッ――。

 と、アオははっとして顔を上げると、もう一体の青騎士に向かって矢のように飛んでいった。

 ――――……

「――待てっ」と、虹色の鎧を纏った青騎士に追いついた又三郎は、手にした鉄棒を、槍のように投げつけた。
 走りながら放たれた鉄の棒は、先端がわずかに左右にぶれたものの、青騎士の背に向かって一直線に飛んでいった。

 カッツン――。

 と、振り向きざま、手にした大剣を振るった青騎士は、寸手のところで鉄の棒をはじき飛ばした。
「その家には入らせません」と、青騎士の足を止めることに成功した又三郎は、虹色の青騎士と向かい合って言った。
 しかし、又三郎の声が聞こえなかったのか、青騎士は思い出したかのように回れ右をすると、重そうな鎧をガシャリガシャリと揺らしながら、扉の魔女の家に向かって軽々と走り出した。
「――待てっ」と、又三郎は言いながら、青騎士を追いかけて走り出した。
 又三郎は走りながら、両手を合わせてこね離すと、どこから出てくるのか、先ほど青騎士にはじき飛ばされたはずの鉄の棒が、又三郎の手の内から、にょろにょろと再び姿を現した。
「止まれ」と、又三郎は走りながら、青騎士に向かって鉄の棒を再び投げつけた。

 ズン――。
 
 と、又三郎の放った鉄棒が、青騎士の胴体を串刺しにした。
 しかし青騎士は、勢いに乗った足を止めることなく、串刺しにされた鉄の棒を背中から生やしたまま、ポットとサオリのいる扉の魔女の家に向かっていった。
「――」と、又三郎は唇を噛んでいた。一投目の鉄棒が見えなくなったとたん、間髪を入れず又三郎の手に鉄棒が戻るのを目の当たりにした青騎士は、再び投げられた鉄棒に、わざと自分の体を串刺しにさせることで、鉄棒が又三郎の手に戻らないよう、掠め取ってしまったのだった。

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王様の扉(169)

2024-01-19 00:00:00 | 「王様の扉」

 アオは、折れた木刀を悔し紛れに青騎士に向かって投げつけたが、木刀はカツン、と小気味のいい音を立てて鎧にぶつかっただけで、青騎士は身じろぎひとつしなかった。
 飛び上がれば、大剣の一撃が待ち構えているため、アオは小さな足で、草原の中を隠れながら逃げ回ることしかできなかった。
 不器用ながら、すばしこく逃げるアオに手を焼きながらも、青騎士は徐々にアオを追い詰めていった。
 なにかが足りなかった。息も絶え絶えになりながら逃げ惑うアオは、その足りない物が何であるのか、思い出そうと必死になっていた。
 細い足首についた光る輪が、へとへとになってもつれ始めた足の、文字どおり足枷になっていた。
「これは、記憶を思い出せないように、鍵をかけてしまう道具さ」と、アオはマコトの言った言葉を思い出していた。
 どうなってしまうかわからない怖さを振り払いつつ、アオは足首に巻かれた光る輪を、片一方の足で蹴り千切った。

 ドン――。

 と、一瞬動きの止まったアオを狙って、青騎士の足が容赦なく踏み下ろされた。
 青騎士の足の下に隠れたアオの姿は、どこにも見えなかった。

 ――カツン。

 と、かすかな音が聞こえた。
 大股に足を踏み出した格好で、力強く重心を落としていた青騎士の前足に、まっすぐな線が引かれた。
 わずかな間を置き、動きを止めていた青騎士がすっくと立ち上がろうとすると、見えないほど細く引かれた足の線から、ずるりと滑り落ちるように青騎士が崩れ落ちた。
 宙をつかむようにもがきながら、ぐらりと横倒しになった青騎士の足下から、翼を広げたアオが飛びあがった。
 舞い上がったアオの黄色いくちばしには、怪しく反射する鋼鉄の剣が咥えられていた。
 片足を失った青騎士は、剣を構えるアオに向かって、大剣を振り放った。
 しかし、草原に倒れたまま振り上げられた大剣が、軽々と宙を舞い飛ぶアオを捕らえられるはずもなかった。
 青騎士を眼下に見下ろす位置に浮かぶアオは、自分の背丈ほどの長さしかない剣を、青騎士に向かって左右に振り払った。
 と、青騎士の持つ大剣でも届かなかった距離にもかかわらず、アオが振り下ろした剣は、仰向けになった青騎士の鎧を、縦横に刻み切ってしまった。
 アオに切られた青騎士は、さらさらと黄色い砂に姿を変え、消え去ってしまった

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よもよも

2024-01-18 06:21:55 | Weblog

やれやれ。

そういえば子供の時から変な呪文を唱えてたっけ。。

歯医者はいやだ。歯医者はいやだ。歯医者はいやだ。

ってさ。。

でもなぁ。ガム食べてて詰め物とれちゃったから、

放っとくとまたぞろ虫入ってくるだろうしなぁ・・・。

ブツブツ言うけど、

昨日、今日の診察予約しちゃったし。

なんとかスルーできないかなぁ??

はぁ。

そういえば、子供の時から変な呪文を唱えてたっけ。。

歯医者はまずい。歯医者はだめだ。歯医者は怖い。

ってさ。。

でもなぁ。ガム食べてて詰め物とれちゃったから、

放っとくとまたぞろ虫入ってくるだろうしなぁ・・・。

大怪我になったらいやだしなぁ・・・ブツブツ言うけど、

昨日、今日の診察予約しちゃったし。

なんとかスルーできないかなぁ??

はぁ・・・。

× 繰り返し、無限大。。

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王様の扉(168)

2024-01-18 00:00:00 | 「王様の扉」


 ――ズン。
 
 と、地面を蹴る互いの足が、地響きを起こすようにわずかな音を立てた。
 動き出したとたん、二体の青騎士が、打ちかかる又三郎とアオの目の前で、ザザッと黄色い砂に変わり、足下に崩れ落ちた。
 思いもよらぬ出来事に意表を突かれ、青騎士を通り過ぎてしまった又三郎とアオは、前屈みになりながら勢いに乗った足を止めると、残った二体の青騎士に向き直った。
 残った二体の青騎士のうち、虹色の鎧を纏った青騎士は、向き直った又三郎達には目もくれず、まっすぐに扉の魔女の家に向かっていった。

「待てっ――」

 と、追いかけようとする又三郎の頭上を、もう一体の青騎士の振るった大剣が、容赦なくかすめ過ぎていった。

 ――カツン。

 と、振り下ろされた切っ先を木刀で受けたアオだったが、力を増した青騎士の大剣は、木刀ごとアオをはじき飛ばしてしまった。
 間一髪、大剣の一撃をやり過ごした又三郎は、飛ばされたアオを気にしつつも、サオリを追いかけていった虹色の青騎士の元に急いだ。

 ――――……

 大剣の一撃に飛ばされたアオは、ぐるぐると空中で渦を巻くように翼を広げると、すっくと正面を見据えたまま、浮かび止まった。
 アオを狙って追いかけてきた青騎士は、片手に持った幅広の大剣を大きく振りかぶると、遠い間合いを一気に詰めて、唸りを上げる大剣の一撃をアオに加えた。
 自信があるのか、それともあまりに早い切っ先に動けなかったのか、アオは咥えた木刀で重い一撃を受け止めた。
 巨木の幹に斧を打ちこんだような、ボンッという乾いた音が響いた。
 アオは飛ばされこそしなかったものの、明らかに劣勢だった。
 木刀を打ち出して反撃しようとするアオだったが、その姿からは想像もできないほど身軽に動く青騎士は、休みなく大剣を打ち下ろし、一撃、二撃、三撃と、繰り返し大剣の鋭い切っ先でアオを狙い撃った。
 大剣を打ちこまれるたび、アオはじりじりと中空から地面に叩き落とされ、ついには力尽きたように、青々と茂る草花の上に倒れ伏した。
 青騎士は草原の上に落ちたアオを追いかけ、大きな足を持ち上げると、転がり逃げるアオを追いかけながら、草原に深く足跡が残るほど、次々に踏みつけていった。
 踏み下ろされる青騎士の足をぎりぎりのところで避けつつ、アオは木刀で受けようとしたが、いくら堅い木刀といえど、鉄の重さと硬さには勝てず、くちばしで咥えていた木刀が、とうとう半ばからへし折れてしまった。

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王様の扉(167)

2024-01-18 00:00:00 | 「王様の扉」

 と、言ったサオリの声を背中に聞きながら、又三郎とアオは玄関のドアを開け、ゆっくりと外に出て行った。
 遠くに聳え立つ切り立った山々から吹き下ろす風が、地面を覆う草花をそよそよと揺らしながら、心地よく鼻先をねぶる青臭い香りを運び去っていった。

 ――ガシャリ、ガシャン。――ガシャリ、ガシャン。

 と、まだ姿の見えない青騎士の耳障りな金属音が、次第に大きさを増していった。
「来ます」と、又三郎は言うと、足下にかがんで地面に手を当て、自分の背よりも遙かに長い鉄の棒を取り出した。

 ――ガシャンリ、ガシャシャン。――ガシャンリ、ガシャシャン。

 深い谷底から這い上がってきたのは、四体の青騎士だった。
 青騎士の姿は、エスがラジオから伝えてくれたとおり、これまで戦ったどの青騎士よりも、ひとまわり大きくなっているようだった。まだらな色をしていた青騎士の鎧は、虹のようにいくつもの色を反射する鎧に変わっていた。
 耳障りな金属音を響かせて近づいてくる青騎士達から、周囲の空気をビリビリと痺れさせるような、強い気迫を身に纏っているのが伝わってきた。
 空を飛んであっという間に扉の魔女の家にやって来た自分達と比べ、命がけの険しい道のりを進み、何度も奈落の底に落ちながら、しかしその度に復活してやって来た青騎士達は、失敗を繰り返してバラバラに壊れた分だけ、明らかに強さを増していた。

「――」

 と、又三郎は鉄の棒を背中に回した姿勢で、こちらに向かってくる4体の青騎士と正面から対峙していた。決して、後ろには引かないという強い覚悟で、充ち満ちていた。
「扉の向こうに行った方達は、無事なんでしょうか」と、又三郎は青騎士から目を離さないまま、頭の上に止まるアオに言った。「少なくとも、ここに四体がそろったということは、まだ死の砂漠には落ちていないということですよね」
 アオは翼の間から木刀を取り出すと、その黄色いくちばしで素振りをしながら、キキッ――と、又三郎に答えた。
「――ふふん。アオ殿は、頼もしいですね。ですが、二人だけでこの四体の青騎士は、さすがに荷が重たい気がします。ポット殿とサオリ殿が、ちゃんと安全な場所に逃げる間だけでも、足止めしておければいいんですが……」
 又三郎とアオを眼前に捕らえた青騎士達は、いったんその足を止めると、横一列に並び、それぞれが手にしている武器を構えた。

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