浅野ゆうじの独り言

社会・政治に関連する本の感想や日々の出来事についての私なりの考え方を書いています。

中央主導の広域行政

2010-07-05 07:44:07 | 国際・政治

国や地方の借金が900兆円に迫ろうとする状況の中、行政運営の体質改善のための広域行政が進められようとしています。平成の大合併によって、ある程度効率的な地方の行政経営が行われたという実績があり、今度は、行政制度の一部である医療保険や消防などの業際をなくす動きが広域行政です。たとえば、岐阜市は2市4町の岐阜地域といわれる市町村合併を目指していましたが、結果として柳津の1町だけとなり、本来の効果的とされる合併が破たんしています。そこで、市町の区切りがあっても、隣接機能を十分生かすための消防行政だけを合併させ、広域化によって効率化させる、また、国民健康保険制度を、後期高齢者医療保険制度のように、県単位で広域的な内部運営を行う、といった制度のくくりを広げようとするものです。

イメージするところは、広域化すればサービスも幅広く行うことができ、効率的な、また一体的な行政は当たり前のことのように思われるかもしれませんが、この広域化は大きな問題をはらんでいます。

一つは、市町村の合併という住民の意思が働く自主的なものと違い、基礎自治体としての市町村と県の存在意義をなくしてしまうことです。つまり、負担と責任の所在を極めてあいまいなものにしてしまいます。平成の合併が成り立たなかったのは、各市町村の行政サービスへの理解が違っていたこととそのサービスそのものにばらつきがあったことが合併破たんの理由だったはずです。いわゆる地域エゴにあったのです。仮に部分的な行政の広域化をするとなれば、市町村の負担という面を考えた場合、得をする地域と損をする地域が必ずできてきます。それでは基礎自治体の存在意義はありません。また、従来そのような格差是正は、ある程度県が行ってきた行政ではなかったでしょうか。そして、その責任の所在が極めてあいまいなものになってしまうことを恐れます。

二つには、果たして効率化ができるかという問題です。先に言いましたように県の存在意義があるのかという問題を考えれば、二重行政ということになります。このような広域化は必ず組合方式がとられます。そのため県と市町村の中間管理として組合が存在することになり、屋上屋を重ねる管理体制となることが明らかです。後期高齢者医療制度を見ればその管理組織が余分なものであることは明らかです。

詳しく語れば限がありませんので、議論としてはここで辞めますが、ぜひ多くの人に考えてもらいたい問題だと思っています。根本的な制度改善や負担の所在を明らかにしないまま、制度を変えていくのはかなり困難なことではないでしょうか。

以上