行政経営と称して民間の経営手法による行政運営の手法を取り入れ、効率化を進めていこうという動きは数年前から行われ始めています。従来の行政財務は、単年度の単式簿記を民間の発生主義の複式簿記で財政状況を明らかにするような動きであったり、事業の総点検である今はやりの事業仕分けを始めたりといった動きにつながっているのではないかと思います。
このような経営手法によって、旧来から行っている行政サービスの見直しは十分評価されるところであり、厳しい財政状況や将来負担を考えれば、時の経過とともに効率化や見直しの検討は当然だといえます。しかし、行政と民間企業の根本的なサービスの違いも十分認識されなければなりません。
では何が違うのでしょうか。それは、民間企業のサービス対象は顧客という限定されたものであるのに対し、行政サービスは、公正公平を原則に、そこに住む住民全員に対してのものであるということです。つまり、費用対効果のみでサービスを切ることができないところにあります。さらに要望に応じて行政サービスが膨らんでいくという宿命も背負っています。収入面においても、景気に左右されることは同じようなところですが、行政が税収の大幅な増加を見込むための投資は限界があるのに対し、民間は収入増に対する明確な投資方針や収入に応ずる支出カットを柔軟に行うことができます。ゼロサム、つまり固定的な配分中心の経営を強いられる行政経営と、投資効率を求めて柔軟な経営が必要とされる民間経営の違いといえそうです。
クルーグマンが言う「優秀な経営者が必ずしも優秀な行政のトップになりえない」(こんな言葉だったかどうか?)の意味は、このようなことではなかったかと理解しています。私も、民間にいただけに、このような壁(相違)には何度もぶつかっています。そして、サービスの対象であると同時に大きな組織の一員でもある住民の合意を得る難しさ、を経験しなければ、行政経営はできないといっても過言ではありません。
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