今回の作品は仲村トオル主演でTVドラマ化されている、堂場瞬一著の「アナザーフェイス」シリーズである。
警視庁捜査一課の刑事であった主人公小松哲は、妻を亡くして小学生の子どもの面倒を見るために、定時
で帰宅出来る、刑事総務課勤務への配転を希望して、現在は事務関係の仕事に就いている。
ところが彼には捜査手法の特技(容疑者を自白に追い込む)があり、その手腕を惜しんだ警視庁の上層部
が、発生する事件に従事させることで事件の解決を図るのである。
第一作「アナザーフェイス」は、ある銀行支店の行員の子どもが誘拐される事件が発生する。身代金に受け
渡しに東京ドームを指定されるが、まんまと身代金が奪取される。そこで主人公が被害者宅へ張り付き、
事件の解決に協力するように命じられる。誘拐された子どもは無事に返されるが、残る誘拐事件の解決に
粘りり強く活躍する刑事たちの活動を描いている。
第二作「敗者の嘘」は、被疑者死亡のまま解決済みとされた事件に、自分が真犯人だったと名乗り出た
女性弁護士がいた。どう見ても女性の犯罪とは断じ切れない警視庁上層部は、主人公にこの女性弁護士
との接触を命じて真相を探らせる。真犯人とされながら死亡した被疑者と、今回自首してきた弁護士とは
どんな接点があったのか。粘り強い捜査の結果でその嘘を暴く事で解決を図る。
第三作「第四の壁」は、主人公が学生時代に所属した劇団から創立20周年記念公演に招かれる。その
公演の舞台中に出演車がが死亡する事件が発生する。今やTVや映画で俳優として活躍する昔の仲間も
参加する記念公演で起こった事件。さらに劇団の主宰者も死亡する事件が発生する、主人公は否応なし
に捜査を担当する。何がこの劇団であったのか、20年も前の事から調べ直し解決を図ろうとする主人公。
この小説の主人公は、俳優を志した時代の修練で鍛えた対人との駆け引きで、何時の間にか犯人を自白
に追い込んだり、立て篭もり犯人を説得するできると言う特技があるのである。ただこの小説はかなり理屈
ぽいところがあり退屈なのが難である。子どもの面倒を頼む亡き妻の母親とのやりとりも面白い。