ギタリストは、好んで弾く定番メニュを持っている。
それは大方インストものでご挨拶代わり、指慣らしといった調子でさらりと弾くのがいい。
スライドギターを弾く人のメニュには「Sleep Walk」が入っているだろう。
もともとスティールギターで弾かれた曲で、スティール奏者はもちろんトライするのだが、曲調はスライドギターに分があるかもしれない。
ロマンチックなオーケストラサウンドで一世を風靡したフランスのポール・モーリアが、マルセル・ビアンキとレコーディングした演奏が素晴らしい。
マルセル・ビアンキはフランスのジプシー・スイング・ジャズのギタリストだ。
が、ハワイ音楽マニアからはフランスのスティール・ギタリストとして知られ、フランス発ハワイものアルバムを手がけている。
ポール・モーリアはビアンキのオーケストラでピアノを弾いていたことがあり、世に出てから恩師に報いるべくレコーディングを敢行したようだ。
ポール・モーリアは当時のオーケストラサウンドに新しいアレンジを加えた。
どちらかというと脇役だったドラムスやベースを前面に出したアレンジを行い、
リズムを基本にしたトラックをベースに、弦楽器や管楽器が縦横無尽に鳴り響く。
聴いただけで「ポール・モーリア・サウンド」だとわかるようなアレンジと演奏を持ち込んだ。
コンサートではバイオリンなどにピックアップをつけてアンプリファイドする当時としては革新的なことをやっていたようだ。
そんな「ポール・モーリア・グランド・オーケストラ」をバックにビアンキのスティール・ギターが解き放たれた鳥のごとく響きわたる。
どういうチューニングで弾いているのかわからないが、ハワイアンスティールとはまるで異質な壮大な音場空間が好きだ。
その昔世話になったポール・モーリアがビアンキと音楽で会話しているようなそんなレコーディングが素晴らしい。
「Sleep Walk」は、1950年代「サントとジョニー」のファリーナ兄弟の作品として有名な曲。
ギターやスティールギターの演奏ものとして取り上げられるスタンダードとして定着しているが、歌詞があってオリジナルが発売された同じ年に「Betsy Brye」という女性がボーカルものを出している。
コンポーザーのサントとジョニーの演奏が、今聴いても新しいことに驚く。
完成度が高いからこそいつまでも多くのミュージシャンが取り上げるのだろう。
嗚呼、Yさんと演奏をしたくなってきた。
marcel bianchi - la rosita - steel guitar - 1958
Gypsy Swing - Marcel Bianchi
PAUL MAURIAT & M. BIANCHI - ONCE UPON A TIME IN THE WEST
Sleep Walk
Les Paul - Sleepwalk
The Ventures - Sleep Walk
Santo & Johnny "Sleep Walk"