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2017-12-08 | 村上春樹

 



村上春樹
『ダンス・ダンス・ダンス㊦』★★★


「失われた心の震えを回復するために、「僕」は様々な喪失と絶望の世界を通り抜けていく 。
渋谷の雑踏からホノルルのダウンタウンまで―。
そこではあらゆることが起こりうる。羊男、美少女、娼婦、片腕の詩人、映画スターそして幾つかの殺人が―。」

文庫本の巻末を読んでもぴんとこなかった。
記憶ってそんなもの。
春樹好きって言っているわりにもそんなもの。



久々に読書会に参加する。
と言うか主催者側になろうとしている。どきどき。
春樹の読書会もマンモス化しちゃったから、小さくささやかにしたい。
来週初顔合わせ☆



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「人と人とが義務的に会うことなんて何もないんだ。会いたくなれば会えばいいんだ。」



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僕は平面的パックマンとしてあてもなくただぱくぱくと点線を食べ続ける。事態は全然進展していないように感じられる。僕は何処にも近づいていないように思える。途中からどんどん伏線が増えてきてしまった。
僕は脇道をどんどん進んでいるような気がする。メイン・イベントにたどりつく前に付属演芸に関わって時間と労力を無駄に費やしているような気がする。いったいメイン・イベントは何処でやっているんだろう?そして本当にやっているんだろうか?



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雨は相変わらず静かに均一に降り続いていた。夜の間に植物の芽を導き出す、優しく柔らかな雨。「非常に、完全に、死んでいる」と僕は自分に向かって言ってみた。



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僕は頭の中でこれまでの事態の進行を順番に辿り、それに対して自分がとった行動をひとつひとつチェックしてみた。それほど悪くない、と僕は思った。たいして良くはないかもしれない。でも悪くない。もう一度同じ立場に立ったとしても、僕はやはり同じように行動するだろう。それがシステムというものだ。一応足は動いている。ステップを踏み続けている。



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家の回りに何千人もの透明な沈黙男がいて、透明な無音掃除機でかたっぱしから音を吸い取っているような気がした。ちょっと音がするとみんなでそこに飛んでいって音を消してしまうのだ。
「静かなところですね」と僕は言った。



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「人と人が友達になるというのはすごく難しいことだと思うわ」
「賛成」と僕は言った。「難しいに二票」



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たかがセックスなのだ。勃起して、挿入して、射精すればそれでおしまいなのだ。



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「あなたにはあの子の気持ちがとてもよくわかるのね。どうしてかしら」
理解しようと努めているからだと言いたかったが、もちろん言わなかった。



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「あなたすごく良い人だったわ」と彼女は言った。どうして過去形で話すんだ、
と僕は思った。
「あなたみたいな人に会ったのは初めて」
「僕も君みたいな女の子に会ったのは初めてだ」





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外は良い天気だった。夏がもうそこまで来ていた。雨さえ降らなければとても感じの良い季節だ。

かっこう、と僕は思った。
夏だ。



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「私のせいね?」
僕はゆっくり頭を振った。「君のせいじゃない。誰のせいでもない。人が死ぬにはそれなりの理由がある。単純そうに見えても単純じゃない。根っこと同じだよ。上に出てる部分はちょっとでも、ひっぱっているとずるずる出てくる。人間の意識というものは深い闇の中で生きているんだ。入り組んでいて、複合的で・・・・・・解析できない部分が多すぎる。本当の理由は本人にしかわからない。本人だってわかってないかもしれない」
彼はその出口の扉のノブにずっと手をかけていたんだよ、と僕は思った。きっかけを待っていたんだよ。誰のせいでもない。



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「言ったでしょう、そんなに簡単に人は消えないのよ」そうだろうか、と僕は彼女を抱きしめながら思った。いや、どんなことだって起こり得るんだ、と僕は思った。この世界は脆く、そして危ういのだ。この世界ではあらゆることが簡単に起こり得るのだ。



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