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白と黒の世界








ナショナル・ギャラリーで開催中のMonochrome: Painting in Black and White展へ行った夜、イングリッシュ・ナショナル・バレエのSong of Earth (La Sylphide との2本立て)を見た。


「モノクローム」展は、そのタイトル通り、展示物全てが白黒だ。

モノクロで描くのがごく普通なモダン・アートだけでなく、メムリンクやレンブラント、アングルらが描いた作品を通して、色のない絵画が、われわれが普通見ている世界からわれわれを引き剥がし、別の世界に解放するのを知ることが狙い。

白黒使いは

修道院の装飾の無彩色の世界は精神世界に集中するための試みであり、版画や彫刻に対抗するためであり、アーティストが技術を見せつけるためでもあり、意味を引き剥がして別の意味を与えるためであり、何かに隠されて見えないものを見せる手段である。


例えばわたしは、有名なアングルの「オダリスク」のモノクロ(おそらくアングルが弟子の訓練のために描いたもの)を見ることによって、その「奇妙さ」が際だっていると思った。

美しく色彩されたあの有名な「オダリスク」は、あの美しいオダリスクたり得るために、身体が異常に誇張されて描かれている(背骨から骨盤が長すぎる、左足がありえない角度であるなど)。アングルのこの大胆な計算はすばらしい効果を生んでいて、彼女はこの世のものではありえない優美さをたたえ、官能的に見える。
しかしモノクローム作品ではこの作品のグロテスクさが際立っていないか?
この白黒作品を、弟子のトレーニングのために描いたのならば、アングルはなるほど天才だ。


展覧会自体はちょっと渋すぎる感じがしてワクワクさは欠けるが、その夜、イングリッシュ・ナショナル・バレエのSong of the Earthを見た。

マーラーの楽曲に乗せて、女性と男性、その男性に取り付いた死神の3名を中心に構成されたケネス・マクミランの作品だ。
この衣装が、女性を生命の白、死神を死の黒、男性を両方に属する灰色で表現し、群舞は白黒と灰色。完全にモノクロームの世界。生まれて死ぬ、すべてを削ぎ落としたわれわれのナマの世界。

これは偶然ではないかも...


(写真はナショナル・ギャラリーから)
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