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彫刻か、絵画か。




ロンドン、ヴィクトリア&アルバート博物館で始まった『ドナテッロ展』Donatelloへ行ってきた。

ドナテッロ(1386-1466)は、フィレンツェ出身、ルネサンス初期の金細工師、彫刻家である。

ギベルティ工房で修行し、絵画のマザッチョ、建築のブルネッレスキとともに、彫刻分野でフィレンツェの初期ルネサンスを牽引した...
これらの名前を見ているだけで、ルネサンスの初期の鼓動が聞こえるようだ。フィレンツェでまさに今、という感じ。




ドナテッロの一番重要な作品である、ブロンズのダビデ像(それまでどんな時代のどんな地域においても創られたことのなかったルネサンス的な斬新な作品)や、うっとりするほどハンサムな聖ゲオルギウス像こそ来ていない。

が、優美な大理石のダビデ像(一番上)、少年の姿をしたヨハネ像(二枚目)、ブロンズの聖人San Rossore(三枚目)、浅浮彫・スキアッチャート(四、五枚目)の数々は、この瞬間に生まれんとするルネサンス(再生)、人間中心主義。




ブロンズの聖人San Rossore、現実の人間の内面の描写...生きているようである。




ドナテッロの浅浮彫は、ルネサンス期の「彫刻と絵画のどちらが上か」論争、つまり比較芸術論争(パラゴーネ)を思い出させた。

ドナテッロ誕生の約80年後に生まれた盛期ルネサンスの巨匠レオナルド(1452-1519)は、表面上に立体を表現し、深遠を伝える絵画が格上であることを主張。
一方のミケランジャロ(1475-1564)は、「自分は画家ではない」彫刻家である、彫刻こそ本来の芸術である、と豪語した。

浅浮彫(透視図法を駆使した錯視的表現)は、彫刻と絵画の間にあるようだなあと。




ミケランジャロは他にこうも言っている。

「絵画なるものは、彫刻に似ているほど良く、彫刻というものは、絵画に似ているほど悪い。絵画と彫刻には、月と太陽ほどの、違いがある」

「二次元で表現する絵画よりも、三次元で表現する彫刻の方が上である」と。


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