衆院に広島6区から立候補している無所属前職、亀井静香(78)は5日、尾道市内10カ所で街頭演説を行った。午後3時すぎから JA高須駐車場で行った演説では、約200人の前で安倍政権の政策について「全部逆をやっている」と批判した。

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住民の期待を一身に背負う亀井氏。地方と弱者の切り捨てを絶対に許さない(2014.12.5筆者撮影)

 午後3時、選対本部長を務める佐藤公治前参院議員が姿を見せた。集まった市民に「なぜ年末に解散するのか、700億円近いお金をかけてなぜこの時期にと思っておられるのではないか」と向ける。地域や所得などの格差がますます拡大していることを挙げ、「政治に無関心でいられても、無関係でいることはできない」と提起した。

 佐藤氏は「一昨年、亀井先生と消費増税や原発再稼働、TPP参加、集団的自衛権容認などについてやるべきでないと言った。大変なことになるからと。私と同じように、離党してまでもけんかした。こんな状況になって今、皆さんが『選挙なんか、政治なんかもういい』と言ってもし亀井先生がここから出て行かなければ、『尾道は総意として賛成して自民党の方を出したんでしょ』ということになる。だから、私はどうしても亀井先生に勝っていただき、国会で異を唱えてもらいたい。私たちの思いを伝えていただかなければ。一党多弱になっては駄目だ」と訴えた。

 宣伝カーで到着した亀井氏は集まった市民全員に握手して回った後、マイクを取る。「佐藤公治先生と、一体となってこの郷土を守り抜き、おかしくなっている日本をどうにかしようと、私が先発ピッチャーをやる。この戦い、負けるわけにはいかない」と口火を切ると、拍手が湧いた。

 亀井氏は政策について安倍首相に電話で何度も翻意を促したことを明かした。「今、山口県がどうなってるか、一生懸命魚を捕り、百姓をやって生きておられる皆さん方の生活がどうなっているか、分かってるのか」と言うと、「いや、そのうち良くなるように……」などと返される。「何言ってんだ。逆のことをやってるじゃないか」と諭したという。

 アベノミクスについて「円安はメリットもあるが、日本で作った物を外国で安売りしていることになる。円安ならもっと売れるはずだが、最近は日本中、国内の工場をつぶして外国で物を作り、外国で売るから、全然輸出が伸びていかない。貿易赤字がずっと続いていく。国家にとっては大変な話」と批判した。

 物価について「中東で油が下がっているのに原料がどんどん高くなり、中小零細企業は製品を高くしなければやっていけない。悪性インフレに近くなっている。懐が良くなって物価が上がるのはよいが、全国で所得が減っているのに、物価が上がっている」と指摘した。

 「大企業は下請け、孫請けに値段を下げさせ、正社員を半分ぐらいに減らしながら、300兆円もため込んでいる。銀行から借りる必要がない。今度はその大企業から減税すると言っている。中小企業から減税すればいい。それが当たり前の話だ。今度はどんどん懐が寂しくなる者に消費税をぶっ掛けるという。1年半延ばしただけの話で、何でそんなことをしなければならないのか。ある所から取って、ない所に回すのが当たり前なのに、逆をやっている」

 集団的自衛権の容認に触れ、「大変なことをやっている。資源防衛ということで戦争になって、米国が『自衛隊を出せ』と言ったら『出せる』と言った。アメリカは10年に1回戦争している国。大東亜戦争の後、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争、アフガン戦争と、ろくなことになっていない。今までなら『あなた方が押し付けた憲法で出せない』と応じなかったが、今度は出せるようにした」と指弾。「自衛隊のひつぎがどんどん送られてくるようなことをやれるのか。やれっこないだろうと。結局は戦争好き人間にされただけだぞと。晋三は『いやあ、私は別に……』などと言葉を濁していた」と報告した。

 原発再稼働にも言及。「福島ではねた後、自民党は原発をやらんと言った。自民党は今回、全員再稼働賛成になっている。福島では今も、どんどん放射能が出ている。五輪が欲しいばかりに「完璧に制御できています」とうそを言った。放射能が人の体にどう影響するのか分かっていない。どこまでなら大丈夫かを。日本は地震大国で、どこで起きるか分からないのに」と警告した。

 その上で、亀井氏は「今の国民はでかいくぎを腸や肺まで打ち込まれても、マスコミが『針治療している』と言うと『まあ、効いてるのか』と思ってしまう。あなたたちは違うと思うが、心臓に打ち込まれるまで誰も抗議しない。生体反応が起きなくなっている」と挑発。「今度の選挙で今日の新聞のように大勝したら、覚悟しなければ」と警告した。

 一方、政権与党について「前回も前々回も、消費増税反対、TPP反対と言っても、皆さんが投票に行っているうちに逆になっていた。こんな日本に未来はない」と両断した。

 現在の自民党については「ごますりばっかり。誰一人、『やっちゃいかん』と言わない。昔の自民党は違った。少しおかしなことをしようとすると、『駄目だ』と殴り合いまでした。今はシーンとしてる。それが大勝したらどうなるのか。私は今、引くわけにいかない」と訴えた。