写真・図版詩人 アーサー・ビナードさん(46歳)

 言葉は何かを伝えたり、世界をおもしろく見つめたりするもの。日本語で詩を書いていて、僕はそう思っています。でも、「人をだます」ためにも使われることを忘れてはいけない。

 米国は朝鮮戦争(1950~53年)で宣戦布告していません。ずっと「警察行動」と言っていました。その後のベトナム戦争も宣戦布告せず、「国防」として戦い続けました。

 日本は今、米国の下請けで戦争ができる国になろうとしています。それが「集団的自衛権」という言葉でごまかされようとしている気がします。集団的自衛権は、いわば「包装紙」。破ると「戦争」という中身が出てくるんです。

 オバマ大統領が4月に来日したとき、「大統領が集団的自衛権の行使容認を支持」と報じられました。僕は「支持」じゃなく、「指示」だったととらえています。米軍にやらせたくないことを日本にやってもらうため、「自衛隊をどこにでも出せるようにしろ」と。

 米国による「押しつけ」と感じず、安倍首相たちも突き進んでいます。「戦争放棄」をうたう憲法を理由に断ることができるのに。集団的自衛権を認めてしまったら、米国の言いなりになるだけ。「属国」のようになってしまいます。

 米国は自由や民主主義を唱えていますが、政府は憲法違反を繰り返し、国家権力に歯止めをかけられずに来てしまった。日本には、そんな国になってほしくない。政治家の言葉にごまかされてはいけない。(聞き手・竹田真志夫)

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 米ミシガン州出身。大学で英米文学を学び、1990年に来日。日本語で詩を作り始める。2001年、詩集「釣り上げては」で第6回中原中也賞