AERAdot. https://dot.asahi.com/dot/2017090600063.html?page=1より転載
そもそも“政治”って何? 憲法学者・木村草太の授業 ( with AKB48 )
日本一やさしい「政治の教科書」できました |
木村草太、津田大介、AKB48著
共謀罪、待機児童、格差問題に始まり、森友・加計学園問題から政治家の暴言や不倫、不正まで、ここ数年、テレビやネットをにぎわしている「政治」の問題。ネット上ではさまざまな意見が飛び交い、主張が対立することもしばしばだ。
しかし、「政治」とはそもそも、どういうものなのだろうか。若手イケメン憲法学者としても知られる木村草太さんが、AKB48の加藤玲奈さん、向井地美音さん、茂木忍さんの3人に行った政治の授業をまとめた本、『日本一やさしい「政治の教科書」できました。』(朝日新聞出版)から、「そもそも政治とは?」という授業を紹介したい。
* * *
■AKB48の中にも「政治」はある
木村草太:いきなりですが、皆さんは「政治」と聞いて何を思い浮かべますか?
加藤玲奈:いきなり「政治とは?」と言われても、正直なところ、よく意味がわからないです。
向井地美音:私は18歳になったばかりですが、選挙権をもったことで、周りの大人からも「政治にかかわれるオトナになったね」と言われます。
茂木忍:難しい言葉っていうイメージがあります。いざ「政治」の意味を問われると、うーん、難しいです……。私たちはどうやって政治にかかわればいいんでしょうか?
木村:「政治」という言葉にはさまざまな定義があります。簡単に言うと、政治とは「たくさんの意見や価値観がある中で、一番いいと思うものをひとつ決め、その決定に皆が従うこと」だと私は理解しています。
この定義に当てはまるものは、別に国の政治だけではありません。例えば、子どもたちが「鬼ごっことおままごとのどっちで遊ぶか決める」のもひとつの立派な政治です。
鬼ごっこをやりたい人とおままごとをやりたい人がいる中で、皆でどっちで遊ぶかを決めて、決めたほうに全員が従うわけです。このように日常生活の中でも、色々な意見があるけれど、ひとつの方針を決めてそれに従うという経験は、結構たくさんあると思います。
向井地:そう考えると、AKB48でも同じような場面がありますね。ダンスの振りつけとかも、色々なアイデアややり方があるけれど、最後はどれがいいか多数決をとってひとつに決めたりします。
木村:なるほど。同じメンバーでも、一人ひとり考え方ややりたいことが違っていれば、当然意見は分かれますよね。
茂木:意見が分かれたときは、ダンスの先生が「こうやって動いて」って言って統一することもあるし、3パターンくらいある中から皆で「どれにする?」って、話し合って決めることもありますね。
木村:振りつけの先生が「こうしなさい」というのは“指示”ですよね。メンバー自身が物事の決定に参加しているわけではありませんから、そこに政治はありません。
それに対して、メンバー自身で決めなければいけないときは、色々なタイプの振りつけを出し合って、最終的にひとつに決めなければなりません。ここには「政治」があります。そういうときに気をつけなければいけないことって、何だと思いますか?
向井地:うーん、何だろう……。
木村:ポイントは、たくさんの意見が出ても、最後はひとつしか選べないということです。みんなで決めたことについて、同じ意見だった人は満足するでしょうが、ほかの人たちは少なからず不満が残ります。そうした不満にどう対応するのか、という問題が出てきます。
このように政治の場には、必ず“敗者”(自分の意見が通らなかった人や自分の価値が認められなかった人)が生まれてしまいます。政治を行ううえでは、このことをつねに考えなくてはなりません。
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