マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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菅生大垣内のフクマル迎え

2015年10月03日 09時09分08秒 | 山添村へ
冷たい風が吹くからと云って例年よりも1時間早めてフクマル迎えをされた山添村菅生のU家。

長男・次男の子どもとともに「今年もありがとうございました。来年も健康でいられるようよろしくお願いします」と手を合せた大垣内の家族だ。

ご飯を中に納めたユズリハを里道に供えて立ち去る。

ワラ火で焚いたフクマル迎えの火はオヒカリ。

家に持ち帰る。

戻る途中に垣内の共同井戸がある。



蓋を開けて柄杓で「若水」を汲んでバケツに入れて持ち帰る。

昔は手動の手押しポンプで「若水」を汲みあげたそうだ。

「若水は」玄関前のカドに置いた。

共同井戸には注連縄が置いてあった。

玄関や納屋などに注連縄を飾るとともに共同井戸にも飾っているのだ。

「若水」は雑煮を作る水に使う。

元日の朝には当主が「若水」で顔を洗う。

洗って東の方角に向かって「今年も良き年でありますように」と手を合せる。

フクマルは正月神。

歳神を家に招きいれるしきたりは昔も今もそうしていると云う。

フクマル迎えの火はハンドコに供えた鏡餅横のローソクに移す。

フクマルに供えたユズリハ挟みのご飯も添えていた。



火が消えても正月三が日はそのままにしておく。

フクマル迎えの火は鏡餅だけでなく、神棚の神さんや仏さん、ダイコクさん、オイナリさんにも火を移す。

竃があった時代は雑木にも火を移し、火種にしていたという。

こうして当主は「今年もありがとうございます。来年も健康でありますように、よろしくお願いします」と手を合わせて祈念する。

ご飯を挟んだユズリハは供えてすぐに引き上げるが、鏡餅は正月の三日間はこうしてハンドコに置いておく。

かつては竃の蓋にもそうしていたと話す当主に「良きお年をお迎えください」と伝えて退出したら雨が降っていた。

明日は雪にかわるであろう。

本来ならば除夜の鐘が鳴るころにフクマル迎えをされるのだが、昨今は日が暮れるとともにする家も増えつつある。

U家家族のフクマル迎えの際にであった男性はフクマルの松明が強風で煽れたら枯れ草に燃え移るであろうと断念されてご飯を詰めたユズリハだけを供えた。

火はなくとも腰あたりにフクマルさんが居る。

振り向いてはならないと先代から伝えられてそうしていると云う。



その後にやってきた男性は雨がやまないゆえ、松明火を残して足早に立ち去った。

菅生の各戸はこうしてフク(歳神さん)を迎えた。

(H26.12.31 EOS40D撮影)