「はあ? ああ・・まあ。それは、よく言われます。第一、私達の苗字(みょうじ)自体、面白いでしょ?」
女性記者の串木が、逆に里山へ訊(き)き返した。
「ははは…そうですよね。お二(ふた)方とも珍しい名字だ」
そこへ小次郎が玄関へ出てきた。
「…ああ、小次郎。取材の干柿さんと串木さんだ」
『僕が小次郎です。今晩は…』
「キャァ~~! 猫が話した。本当なんですね!」
「馬鹿!! 取材するお前が驚いて、どうすんだっ!」
干柿はカメラを構え、小次郎に合わせながら、串木を窘(たしな)めた。
「すいません…。君が小次郎君か。よろしくねっ!」
「さあ、こちらへ…」
里山は串木と干柿を応接室へ導いた。当然、小次郎も三人の後ろに付き従った。
応接間にはすでに沙希代が入っていて、紅茶カップと手盆の菓子鉢を置いたところだった。
「どうも…奥様でいらっしゃいますか。どうぞ、お気遣(きづか)いなく…」
串木は女性らしい柔らか声で沙希代に言った。
「ごゆっくり…」
沙希代は二人に小さくお辞儀をし、素早く応接室を出た。その後、串木は女性記者らしく、やんわりと質問を進めた。そこはそれ、プロである。次第に里山も小次郎も、串木のぺースに乗せられていった。