goo blog サービス終了のお知らせ 

水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ⑤<42>

2015年07月14日 00時00分00秒 | #小説

「立国される・・とお聞きしましたが?」
 突然、狛犬(こまいぬ)がカップをフゥ~フゥ~と冷(さ)まし、啜(すす)りながら話しだした。狛犬は猫舌だった。里山は狛犬のフゥ~フゥ~が嫌いで、過去、頭を叩(たた)きたい気分に何度もなったが、その都度、我慢していた。そして今は、その解決策が完成していた。狛犬がフゥ~フゥ~する間、見ないようにする手法である。態(てい)のよいシカトだが、狛犬の姿を見ないことで腹も立たなくなったのである。そしてこの日も、狛犬がフゥ~フゥ~し出したとき、里山は左を向いて小次郎の背を撫(な)でていた。背を突然、撫でられた小次郎は、ウトウト・・眠る状態から目覚めたが、里山のするに任せた。
「ああ、まあな…。どこから聞いたんだ?」
「えっ? ああ、まあ…。風の噂で」
「そうなんだが、こればかりは本人の意思だからな。股旅(またたび)先生にも言われたよ」
「股旅先生とは、どちらで?」
「ああ、狛犬はしらなかったか。いやなに、小次郎の師匠筋に当たる猫の先生だ。俳句を嗜(たしな)んで旅しておられる俳人ならぬ俳猫だ」
 狛犬がフゥ~フゥ~しなくなったので、里山は元の姿勢に戻(もど)った。
「俳猫! こりゃ、いいですね、ははは…」
 里山の言葉を聞き、狛犬は賑(にぎ)やかに笑った。小次郎はその笑い声で目を開けた。なんだ、この男は…と少し怒れたのである。小次郎としては、少しの時間でも身体を休め、眠りたかったのだ。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする