水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-50- どっこい!

2018年10月12日 00時00分00秒 | #小説

 生きていく上で、物事が総(すべ)て自分の思うように動けば、それに越したことはないが、世の中はそう甘くない。当然、逆撫(さかな)でするような事態が起きて思い通りにならなくする。が、しかしである。ここが総ての分岐点で、どっこい! と諦(あきら)めないでやり続けることが物事を成就(じょうじゅ)させるポイントとなる訳だ。もちろん、やり続けたから成就するというものでもなく、そこには緻密(ちみつ)な方法と奥深い思慮(しりょ)が必要となることは申すまでもない。分からないから申してくれっ! と言う方には何故かの理由を解説しないでもないが、疲れるから明日(あす)にして欲しい。^^
 秋の嵐が近づいていた。文語で言うところの野分(のわき)、早い話、台風である。困ったことに、秋の嵐を、なぜ台風と呼ぶのか? という言語研究をする一人の風変わりな学者が、とある大学の研究室にいた。迷惑顔をしながら、それでも助手だから仕方なく従う助手が訊(たず)ねた。
「教授! もう、やめましょうよぉ~。また研究費、減らされますよっ!」
「ははは…、どっこい! そんなことで私はやめませんよぉ~」
「そうはおっしゃいますがね、教授。背に腹は変えられませんよっ!」
「おっ! 君、今、上手(うま)いこと言いましたねっ! 背に腹は変えられん・・ですか…。これは面白いですね。確かに背と腹は変えられませんが? しかし…大事な五臓六腑(ごぞうろっぷ)とはいえ、背中もねぇ~。腰痛になれば困るでしょうがっ! 寝たきりですよっ、君っ!」
「私に言われても…。それより、この辺(あた)りでどっこい! やめません? 経理担当の私の身にもなって下さいよ、教授っ!」
「ははは…私は私。君の身にはなれませんよっ」
 愉快な気分で笑う教授に、助手は、このすっとこどっこい! には何を言ってもダメだ…と、とうとう諦めた。
 どっこい! には、向かい風を撥(は)ねつける力があるようだ。^^

                                 


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