水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-61- 達成感

2018年10月22日 00時00分00秒 | #小説

 人はやっている事が無事になし終えられると達成感が得られ、満足げな愉快な気分となる。逆に、やっている物事が中途半端に終わったり失敗することにより達成されないと、気分が落ち込んだりする。もしかすると、人の人生はそうした連続なのかも知れない。これは公私を問わず言えることである。例えば私事(わたくしごと)だと、応援しているチームや人物といった対象が勝つと、自分のことでもないのに達成感が得られる。この逆もまた然(しか)りで、負ければ気落ちする。仕事でもノルマが達成出来たり契約が取れたりすると達成感に満たされ、愉快な気分が得られる。
 二人の老人が話をしている。
「どうされました・ そんなに落ち込んで…」
「いえ、なに…。ほんのつまらんことで…」
「と、申されますと?」
「実は、いつもよりパックの数が少なかったんです」
「はあ?」
「いえね、いつもは五切れ入っている白身魚フライが四切れで…」
「ははは…それはお店の都合じゃないんですか?」
「いえ、私は五切れでないとダメなんです!」
「五切れでないとダメ? なぜです?」
「二(ふた)切れはビールのツマミ、で、二切れは晩のオカズです。さらに残った一(ひと)切れは次の朝のガーリック・トーストに挟(はさ)むんですっ!」
 聞いていた老人は、好きにやってりゃいいさっ! と思ったが、そうとも言えず、暈(ぼか)して笑った。
「明日(あした)の朝はその分がないっ! ぅぅぅ…」「一日ぐらい、いいじゃありませんかっ」
「いや、ダメなんです。私、それを食べないと達成感が得られず、一日が始まらんのですっ!」
「海老フライじゃダメなんですか?」
「海老フライ…海老フライ? 海老フライもアリか…」
 大相撲の立会い変化と同じで、達成感は違う代用の方法で得られることもある。^^

                                 


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