水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-59- 我慢(がまん)

2018年10月20日 00時00分00秒 | #小説

 この世は我慢(がまん)することが多い。グッ! と我慢できるほど、いいことが多くなる。逆に我慢できなければ諍(いさか)いごとや言い争い、紛争、さらに大きくなって内戦、戦争へと規模が次第に大きくなっていく。世の中はすべて我慢と我慢の妥協の中に成り立っている・・といっても過言ではない。我慢をすれば、当然のことながら愉快な気分は消える。しかし、我慢をしながら笑える人は達人という他はない。こういう人は笑いながら怒ることが出来るだろう。
 とある大衆食堂である。二人の人が、注文の先だっ! 後だっ! で揉(も)めている。
「ははは…私は怒ってるんですよっ! 先に注文したのは私なんですからっ!」
「だって、あなたは一端(いったん)、トイレへ消えたじゃないですか! 権利はそのとき消えてますっ!」
「消えたっていいじゃないですか! その間に肉野菜定食が出来たって、それは私のものですっ!」
「ははは…あなたのものじゃないっ! 頼んだ人がいなけりゃ、権利は私に回りますっ!」
 二人の遣(や)り取りを聞いていた店員が口を挟(はさ)んだ。
「どっちだっていいじゃないですかっ! 冷めちまいますよっ!」
 そのとき戸を開けて、別の客が入ってきた。
「ちょいと急いでんだっ! …あっ、それっ!」
 行き方の定まらない肉野菜定食は、その客に回ることになった。
 一方が折れて我慢しないと、こういう鳶(とんび)に油揚(あぶら)げ的なことになる。^^

                                 


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