水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-58- 気が合う

2018年10月19日 00時00分00秒 | #小説

 気が合う人と話していると、自然と心が和(なご)み愉快な気分になるものだ。当然、その逆も有りで、気が合わない人との話は自然と不愉快になるものだ。
 とある超有名大学で、この違いを研究する心理学の教授がいた。この教授は学内でも変人として名を馳せる風変わりな男だった。この教授には媚(こ)び諂(へつら)うように付き従う一人の助手がいた。媚び諂う理由は簡単明瞭(かんたんめいりょう)で、講師昇格を目論(もくろ)む魂胆(こんたん)があったからである。
「君はコーヒーを飲まないのかねっ?」
「ええ、教授、僕は結構です。紅茶派ですから…」
「ああ、そうなんだ。気が合わないね、君とは」
「いえっ! 飲まないことはないんですっ! ははは…好(この)み、飽(あ)くまでも好みですっ! ええ! 飲みますよっ! 飲みますともっ!!」
「そんなに意固地(いこじ)にならなくてもいいじゃないか、君。気が合わないと意固地になるのか? …おお! これは研究の余地がありそうだっ!」
「ありません、ありません!! す、少し興奮しただけですからっ!」
「益々、意固地になってきたじゃないかっ、君。ははは…これは、次の研究材料に加える価値がありそうだっ!」
「き、教授!」
 助手は瞬間、この教授とは気が合わないから気を合わせる必要があるな…と思った。
 気が合う場合は愉快な気分になれるが、気が合わないと不愉快になるから、合わせる努力が必要なようだ。^^
 
                                 


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