水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-51- 好き嫌い

2018年10月13日 00時00分00秒 | #小説

見る 最近の子供は好き嫌いが多いという。特に食べ物に関してはその傾向が強いようで、親御さんの悩みの種の一つにもなっているようだ。好きな食べ物だと愉快な気分となり、嫌いな食べ物だと不機嫌になるという。昭和30年代の半ばに育った世代から言わせれば、有り得ない事態なのである。なにせ当時は食べられれば腹が満たされ有り難かった。私も含め、栄養失調の子供で溢(あふ)れていた時代だったのである。好き嫌いがあれば、当然ながら物事を公平に見る、考えることが出来なくなる。偏(かたよ)る・・という訳だ。ある種の我侭(わがまま)、増長ともいえる人間心理で、人としていかがなものか? と、その傾向の高まりに疑問を投げかけたくなる事態なのである。
 とある商店街の一角にあるうどん屋の近くである。二人の女性が語らいながら歩いている。
「あたしは断然、しっぽく派っ!」
「いやだわっ! あたし、シイタケ嫌いなのよっ! だから、月見派っ!」
「あらっ! あたしは生卵、苦手なのよぉ~」
「そうなのっ? 美味しいのに…」
 うどん屋前で足を止め、二人は暖簾(のれん)を潜(くぐ)った。
「へい、いらっしゃい! 何にしましょ?」
「素(す)うどん!」「素うどん!」
 二人は異口同音に言った。
「あらぁ~!」「あらぁ~!」
 二人は意外な一致に、愉快な気分でニンマリと顔を見合わせた。二人とも好き嫌いのある具入りを避(さ)け、愉快な気分になったのである。だからといって、物事を公平に観られる・・という訳ではない。
 好き嫌いをなくすことで、人は愉快な気分で光り輝けるのである。^^

                                 


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