水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

それでもユーモア短編集 (91)雨の日

2019年06月09日 00時00分00秒 | #小説

 雨の日は晴れたあと、当然、やってくる。『ああ、雨か…』とショボくなる人もいれば、ニヤけて、『へへへ…雨か! こりゃ今日は休めるぞっ!』と北叟笑(ほくそえ)む人もあるだろう。雨の日はどこかしっとりとした感がして、静かな風情が漂う。一方、晴れた日は心がウキウキした明るい気分が訪れる。まあ、どっちでもいい訳だが、行動的には雨の日は敬遠されがちだ。運動会や遠足に雨の日は不似合いで、お呼びがかからない。間違って降ろうものなら、てるてる坊主にこっ酷(ぴど)く叱(しか)られることだろう。^^
 とある公民館の一室で俳句同好会が開かれている。同人、二人の会話である。
「一句、出来ました…」
「どれどれ、拝聴いたしましょうかな…」
「━ 五月雨を 集めて沸かす 飲み水や ━ どうです?」
「…どこぞで聞いたような?」
「ははは…雨の日ですぞ。気にしない気にしないっ!」
「雨の日?」
 意味不明な返しに詠(よ)まれた同人(どうじん)は首を傾(かし)げた。
「雨の日は、何でもあり! ということで。ははは…」
 ふたたびの意味不明な返しに、詠まれた同人は『俳句ですかな?』と、心で訊(たず)ね、苦笑した。
 二人のやり取りなど知らぬげに、それでも雨はシトシトと降り続く。
 俳句の出来がどうであれ、雨の日は何でもありのようである。^^

                                  


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