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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (77)雨

2021年08月05日 00時00分00秒 | #小説

 梅雨明け前の雨が今日も降っている。ほんとに明けるのかい? と訊(たず)ねたくなるような冷気を秘めて降っているのだ。梅雨明け前ならムッ! とするような熱気があるはずなのだ。当然、ジトォ~~っと汗が滲(にじ)むはずなのだが…と、ついつい辛(から)く考えてしまう。よくよく考えれば、年によって違う訳なのである。私は自分の甘(あま)さに、ついニタァ~~っと苦笑いをしている。雨は甘い辛(から)いに関係なく、降る時は降るのである。^^
 とある街の商店街である。店の軒下で俄かに降り出した雨が止むのを待つ一人の老人がいる。
「やはり降ったか…。今日の予報は外(はず)れたな…」
 一人、呟く老人だが、なにもテレビの天気予報が外れた訳ではなかった。むしろテレビの予報士は、『雨が降りますから傘を持ってお出かけください』と親切にアドバイスしていたのだ。それをこの老人は、いやいや、降らん降らんっ! と手前味噌な天気予報して出かけたのだった。老人の気分は自分の予報は辛く、テレビの予報は甘い・・というものだった。なんのことはない。老人の方が、メッチャメチャ甘かった訳である。^^ 雨は辛い甘いの予想を覆(くつがえ)して、降るときは降り、止むときは止むのである。^^

                  完


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