水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (79)天気

2021年08月07日 00時00分00秒 | #小説

 天気がどう変化するか? は万人に予測不能である。今の時代、天気予報で大よそのことは分かるようになったが、そうかといって必ずしもそうはならない大ハズレな異常気象も度々(たびたび)起こっている。ということは、辛(から)く考えたとしても、成るようにしか成らないということになる。ほう! 今日は晴れか…、そろそろ梅雨明けだな…くらいに軽く考えた方が楽で気疲れしないという結果を導(みちび)ける。そういうことで、でもないが、私もお天気に関しては余り辛く考えず、甘(あま)く思うようにしている。^^ 身体の疲れに加えて、気づかれするのは嫌(いや)だからだ。^^
 とある町役場である。朝から機嫌が悪そうな課長の嘘林(うそばやし)が出勤してきた。
「おいっ! 課長、お天気悪そうだぜっ! 嵐(あらし)にならんといいが…」
「だなっ! 昨日(きのう)は快晴でニコニコだったんだが…」
「だから、お天気屋の渾名(あだな)がついてんじゃないかっ!」
「ああ、そうだったな。しかし、猛暑、豪雨だけはやめてもらいたいなっ!」
「ははは…被害が出るっ!」
「いつだったか、席に呼ばれて集中豪雨、食らったことがあったぞっ!」
「床上(ゆかうえ)浸水かっ?」
「いやっ! まあなんとか甘めの床下(ゆかした)で勘弁してもらったが…」
「よかったじゃないかっ!」
「よかないが、まあ命に別状はなかったからな…」
「それが、なにより…」
 嘘林の視線が向き、二人は急に寡黙(かもく)になった。
 天気はどんな場合でも甘い方がいい訳だ。^^


                   完


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